上原明子先生(嘉手納中学校)の授業:2010年12月8日

12月11日(土)第5回英語授業力開発フォーラムが開催されました。このフォーラムにおいて上原明子先生(嘉手納中学校)の授業がビデオで公開されました。以下に授業の様子と山川満夫先生(県立教育センター)の指導助言,そして私の感想,参観者の感想などを掲載します。

日時:12月8日
指導学級:嘉手納中学校3年2組
題材
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写真=左から
山川先生(教育センター)
上原先生(嘉手納中学校)
宜志富先生(中頭教育事務所)

授業の流れ

Warm-up
○今日の日付を聞いたあと,今日はジョンレノンが暗殺された日であることを紹介(John Lennon was killed on December 8th thirty years ago)。ALTに“Who is your favorite musician?”と質問して対話を広げていきました。次に生徒に“Who is your favorite musician?”という表現を使って友達に好きなミュージシャンを聞くように促しました。教室では好きなミュージシャンを聞きあう活動が活発に行われました。相手の好きなミュージシャンが分かって「ええ!」「本当?」などのような声も聞かれました。その後,友達の好きなミュージシャンをクラスの全員に伝える活動がありました。

Review
○前時に学んだ語彙の確認を行いました。ALTが単語を読み上げ,生徒はワークシートにその単語を書き取っていく(Dictation)という活動でした。
○ワークシートを使った表現練習が“Quick Fire”というワークシートを使って行われました。Quick Fireというのはその名の示すとおり矢継ぎ早に弾を撃っていくように,日本語を英語になおして矢継ぎ早に言っていく活動です。ワークシートには前時までに学習した英語のセンテンスや語句が,左側には英語で右側には日本語で書かれていました。
こんな感じです;
The movie which I saw last week was very interesting. = 私が先週観た映画はとても面白かった。
Have you ever seen this sign language? = この手話,今まで見たことある?
I want to eat something sweet. = 私は何か甘いものが食べたい

Presentation of the New Material
○本時の内容についてその背景を話した後,グループでテキストを読む活動が行われました。「三つの国で耳たぶを触る習慣がありますが,それはどんな時でしょうか」という質問を投げかけた後,生徒はその質問を探すための読みをグループで行いました。そして音読へと移っていきました。

Check of understanding
○Q&Aの形で内容のチェックを行いました。

Communicative Activity
○本課のキーセンテンスである関係代名詞を使って“Who am I ゲーム”が行われました。これは事前に生徒が作文してきたもの(ワークシートになっている)を先生が読んで(後で生徒のボランティアに読んでもらう)誰であるかを当てる活動です。たとえば,こんな感じです。
The color which I like is pink.
The food that I don’t like is fu-champuru.
The subject that I like the best is English.
Who am I?
生徒はいったい誰の事だろうと真剣に聞いていました。

Consolidation

山川満夫先生(県立教育総合センター指導主事)からの指導助言
1. クラス全員が授業に参加していました。しかも初めから最後まで集中していました。グループワーク,ペアワーなどをうまく使ったのも全員参加型の授業を作るのに役立ったと思います。
2. 教師が英語を使って授業を展開していました。年度の初めは生徒からの反発もあったかもしれませんが,毎日,毎日,使い続けていくことが大切です。そうすれが生徒も教師の英語に慣れていきます。本時の授業では担当教師の早いテンポの英語にも生徒が無理なくついてきていました。英語を使った授業展開は今日,明日だけでできることではありません。これまで教師が英語を使って授業をしてきた成果だと思います。
3. ALTとJTEの役割分担がよくできていました。ALTも自分の役割をよく理解していました。
4. 教科運営力が高かいことがすぐにわかりました。クラスがよくコントロールされていました。メリハリの利いた授業展開になっていました。
5. 4技能のバランスがよくとれた授業展開になっていました。リーディングからライティングへ,そしてスピーキングへと授業がうまく構成されていました。
本時の活動として特に以下の点が印象に残りました。
1. ウォーミングアップの活動が本当の意味でウォーミングアップになっていました。天気や曜日を聞いて終わりではなく,12月8日がジョンレノンの暗殺された日であることに関連づけて,Who is your favorite musician? の活動に持っていたのがとてもよかったと思います。
2. 復習としての活動でワードリストを使ったdictation活動も素晴らしかったと思います。
3. 一斉授業の中でもペアワークやグループワークを上手く組み込んでいました。教師も遅れている生徒への配慮を怠らず,きめ細かい支援がなされていました。学力差がある中でも,そのようなきめ細かな指導ができる教師の授業力は極めて高いと思います。
4. 生徒の書いた英作文を授業に取り入れたのも良かったと思いました。生徒の満足感や充実感を得ることができ,「また頑張ろう」という気持ちも起こさせると思います。英作文も手立てがしっかりと示されていて,遅れた生徒でもなんとが努力すればできるようになっていたのがとても良かったと思います。
多少気になった点として,題材(内容)については,もう少し内容理解を深める必要があるのではないかと思いました(今後,計画されているかもしれませんが)。音読はしっかり理解させた後に行われるものですので,音読の前にしっかり理解できたかどうか確認することも大切だと思います。

最後に,英語の授業では教師の英語力と授業力の二つが重要ですが,上原先生はその二つともが高いレベルにあると思いました。

私の感想

○私は「言葉は気持ちとつながっている」といつも思っています。英語も言葉ですから同じです。日常生活の中でも心地よい雰囲気の中だと話したくなるものです。お酒を飲むとペラペラ英語を話しだす人がいますが,急に英語の能力が上がった訳ではありません。心地よくなったからでしょう。そういう意味では,今日のクラスは初めから終わりまで心地よい雰囲気に包まれていました。リラックスした雰囲気があるからこそ,自ら進んで手を挙げて発表する生徒が沢山いたのだと思います。生徒も「先生が大好き」という感じでした。中学生が(中学生でなくても)好きな人に話したくなるのは当然です。
授業後のコメントで授業者は「生徒がいいから・・・」としきりに生徒のことを褒めていましたが,私はそれだけではないと思いました。授業者の明るい雰囲気。明確・明快な教室での言葉づかい(英語も日本語も)。一人ひとりの生徒に配慮した授業展開。生徒の活動を褒めて認める言動。ユーモアを解する心など,授業者のアート(サイエンスではない)な部分も授業の雰囲気づくりに大きく作用していたと思います。

○英語が単なるclassroom English(=Open your textbook.などの指示英語)ではなく, classroom discourse(=教師と生徒がコミュニケーションのために使う言葉)となっていたのがとても良かったと思います。生徒も絶えず教師の英語の「意味」に集中していました。たとえば,教師が手話の一つを見せながら“This is an American sign language.” と言う場面がありましたが,その発話に生徒がすかさず “I love you.”と答えていました。“What does this sign mean?” と質問しなくても,コミュニケーションの場面においては,文脈から教師が発する言葉の機能的な意味を理解することが大切です。生徒の“I love you.”(=これは「愛している」という意味です)という発話は英語がコミュニケーションの手段として使われていることを明確に示す瞬間だったと思います。逆に言うと英語が形式(文法)のみに焦点があてられて授業が展開しているクラスにおいては,「ペンを貸して欲しい」というつもりで“Do you have a pen?” と聞いていても“Yes, I do.”という返事しか返ってきません。これはDoで聞かれたらdoで答えるという文法に意識が向きすぎているためです。これでは困ります。
本時の授業では,教師が英語で話しているにもかかわらず,教室から生徒の笑い声が聞こえてきたのは生徒が教師の話す英語の「意味」に集中しているからでしょう。教師の使う英語もこのようなclassroom discourseとしての役割を果たすことが大切だと思います。授業後に「実際に生徒が英語を使う場面は教室をのぞいてあまりないのです。」という授業者のコメントにも,英語を教室のコミュニケーションの手段として使おうという強い意志が感じられました。すばらしいと思います。

○“Who is your favorite musician?”の活動にしても,“Who am I?”の活動にしても,身近な友達の事を知る活動でした。自分と関係のないTomやMary の話には興味など持てませんが身近な友達のことは知りたいのが当然です。この二つの活動は「生徒もお互いに聞いてみたい」と思わせる活動になっていたのが良かったと思います。生徒の中には,これまであまり話したこともない相手が自分と同じミュージシャンが好きなことを発見して驚いた人もいたかもしれません。また,“Who am I?”の活動においても,友達の新たな好みや生活の様子などを発見して感心したり驚いたりしたかもしれません。この活動の最中に,生徒の中から笑い声や「オオ!」という声が聞こえてきたのは,この活動がコミュニカティブな活動として成功したことを示していたと思います。

○コミュニカティブな活動が大切だといっても,いきなりコミュニカティブな活動はできません。ドリルばっかりの授業では困りますが,コミュニカティブな活動のためには適切なドリルも必要です。本時の授業を通して授業者がしっかりとドリルも準備していることがわかりました。“Quick Fire”の活動はなんと授業者だけが毎回行っているのではなく,1年生から3年生まで全クラスと取り組んでいる活動だそうです。地道な活動の積み重ねが大きな力を発揮すると思います。嘉手納中学校の英語科全体の取り組みなども大いに学ぶべき点だと思いました。

○本時の授業者に授業のビデオを撮らせて欲しいとお願いしたのは11月29日でした。それからOKの返事をもらって撮影したのが1週間後の12月8日でした。準備をする時間も十分与えることもなくお願いしたのですが,それでも快く引き受けて下さいました。上原明子先生,本当にありがとうございました。

<参観者の感想>

○発表,お疲れ様でした。ビデオを見せていただいて本当にありがとうございました。子どもたちが積極的に授業に参加していて,また,楽しそうに,そして真剣に取り組んでいる姿を見て,感動しました。明子先生が日頃から取り組んでいるからだと思います。すごいです。授業の中で子どもたちが英語を話す時間が多く,pairやgroupでの活動でも友達どうしの学び合いの姿も見られ雰囲気が良かったです。指導助言でもお話があったとのですが,Warm-up がとてもいいアイディアだと思いました。内容理解のさせ方も,子どもたちに考えさせる場を設け行わせていたのも“読み取る力”をつける方法としてとてもいいと思います。今日のビデオを通してた授業研究会では,とても多くのアイディアを学ぶことができたと思います。こんな貴重な機会を設けていただいて,本当にありがとうございました。感謝します!AW(中学校教員)

○今日は大変素晴らしい授業を見させていただきました。明子先生の授業の中で“Thank you”“Great”という生徒への声かけが生徒はすごくうれしいと思います。私も今後こういう声かけをするように心がけていきたいと思います。私は英語の授業の中で,「英語だけでなく,子どもたちどうし“助け合う”ということを育てていきたい」と思っていますが,今日の明子先生の授業は私の理想です。雰囲気を作ることはまずは教師からだと思います。そういうことに心がけてこれからの授業作りにつとめていけたらなと思います。今日は本当にありがとうございました。Thank you.
TS(中学校教員)

○明子先生,今日は本当にありがとうございました。明子先生の名前を見て是非行こうと決めよかったです。10年前にたった1年間しか一緒に働けずに残念と思っていましたが,いろいろなところで会えるので嬉しいです。今もいろんな国をまわっているのでしょうか。中城中の時はトルコに行ってきたお話を覚えています。先生自身が英語をコミュニケーションの道具として実際に使っていることがとても強みになっているんだろうなぁと思います。男子生徒がとてもきらきらしている感じがしました。英語を使うのが楽しいという雰囲気が伝わってきました。私も心機一転で,明るく笑い声を発するように心がけていきたいデス!!もう毎日がモチベーションの低い(低くさせているだろうなぁとの罪悪感を持っている)生徒との格闘で・・・この英語授業力開発フォーラムがずっと続いてくれるように心から願っています。勉強して子どもたちに還元したいと思います。とても楽しみにしています。HY(中学校教員)

○上原先生もALTも子どもたちも生き生きとした良い授業だったと思います。また,先生のコメントの中にもあったように「隣どうし助け合う」ことを初めから指導していたことが,安心して授業を受けられる雰囲気づくりにつながっていると思います。また,授業の中でも少し見られたのですが,良い意味での「ユンタク」があり,子どもたちへの気遣いの言葉がありました。良い刺激を頂きました。ありがとうございました。YN(中学校教員)

○明子先生,今日は本当にありがとうございました。先生の笑顔が一番ステキでした(笑い)授業の始めを見逃したのが残念でした。生徒が英語を読む,聞く雰囲気が定着しているのがすごいと思いました。また,生徒が英語を聞いて笑いが起こるのもすごいと思いました。レベルが高いです。でもこんな雰囲気を毎時間作っているんだろうな,と先生の日頃の工夫が見られる授業でした。活動が多く(だけで定着している)あきのない授業でした。ありがとうございました。SA(中学校教員)

○今日は素晴らしい授業を見させていただき,ありがとうございました!色々な活動を生徒が飽きずに最後まで楽しい雰囲気でやっていたことがとてもよかったです。毎日楽しい授業が展開されているのがうかがえます。とても参考になりました。英検準1級,2級の生徒がたくさんいるのもびっくりしました。授業のほうもこれからさらにレベルアップしていくのかと思うと,これからの授業も楽しみです。今日は来て良かったです。お疲れ様でした。ありがとうございました!! GN(教育委員会指導主事)

○授業を観て,お話を聞いて,とても勉強になりました。英語を好きにさせたい,学級にあたたかい雰囲気を作るというポリシーは非常に大事だと思いました。ペアワーク,グループワークが効果的に活用された授業でした。特に,テストに和訳をしないという指導が印象的でした。英語の4技能を伸ばしたいという意識が感じられました。指導助言にもあったように,Warm-upでコミュニケーションを導入することは大事だと思いました。そこでALTとデモンストレーションをして,その後,パートナーの好きなミュージシャンを発表させたことは非常に良い流れだと思いました。大変勉強になりました。ありがとうございました。YH(小学校教員)

○私は高校の英語教員を目指しているものです。中学校の英語の授業は今まで友達の教育実習でした見たことがなく,昨年,臨時教員として勤めた高校では,高校生でもアルファベットの小文字の“b”と “d”を間違える生徒がいて,中学校ではどのような授業をしているのか気になって今回参加させていただきました。素直な感想として「本当にすごい!」の一言です。先生がおっしゃっていたように,嘉手納という地域の特性もあると思いますが,生徒の英語力の高さ,授業への態度がとても素晴らしかったです。1時間に5つの活動も入れているのに全てがきれいにまとまっていて,生徒もしっかりついてきていて,本当にすごいと思いました。今回,学ぶことがとても多く「私もこのような授業をしてみたい!」という気持ちにさせられ,いい刺激を受けたので,来年の教員採用試験に絶対に受かりたいと思います。今回参加して本当に良かったです。授業をどうもありがとうございました。UM(教員志望)