浦添市立当山小学校の授業:2010年9月12日

2010年9月21日(火曜日) 浦添市立当山小学校の校内研修会(外国語活動の研究授業)に参加しました。授業は6年3組で、担任の先生とALTのティームティーチングで行われました。目標は「行きたい国を(友達に)尋ねたり、尋ねられて答えたりする」でした。

授業では、まず、ビデオを通して、校長先生やほかの2人の先生が、自分の行きたい国とその理由について、英語で語る場面がありました。校長先生はにこやかに英語であいさつしたのち、“I want to go to Vietnam. I want to wear aozai.”とゆっくり語りかけました。児童は校長先生がビデオに出るだけで、もう興味しんしんです。「校長先生はいったいどこへ行きたいのだろう?」と耳はすでにダンボの耳になっていました。英語を聞かせたいと思ったら、聞かせる工夫をしなければなりませんが、生徒が大好きな校長先生やほかの先生方を登場させることによって、「何を言うのかな」という気持ちを起こさせ、英語を聞かせたのは大変よかったと思いました。

また、児童の周りにいる身近な先生が英語を使っていく姿勢を見せることによって児童は英語を大変身近なものに感じるはずです。これまでは中学校や高校の「英語の専門の先生」だけが英語を話していました。生徒にとって英語はとても遠いものに感じていたはずです。しかし、小学校からの外国語活動を始めることによって、しかも担任の先生が担当することによって、英語は児童にとってとても身近なものになります。この点も小学校から外国語活動を始める利点だと私は思っています。

次に担任の先生は、自分が行きたい国について、英語で語りはじめました。児童は「担任の先生はいったいどこへ行きたいのだろう・・・」とこれもまた興味しんしんです。担任の先生は“I want to go to”まで言って、ポーズを置き、そしてゆっくりと “Botswana” と言葉を続けました。生徒の中から「え!どこ?」というささやき声。そこで先生はゆっくりと地図をみせて This is Botswana. と続けました。そして、ゆっくりとその理由を言いました。“I want to see a hippopotamus, a wild hippo.” Hippo の意味が分かった児童からは、「え!わざわざヒポを見にボツワナへ行くの」という声も聞かれました。生徒の興味をぐいぐい引き付けて,そして無理なく英語を聞かせる技術は本当に見事でした!

次はもう生徒の番です。ビデオも見たし、先生のモデルも見ました。気持ちは高まっています。そこでちょっと言い方を練習しました。そして手が上がった数名の生徒を指して発表になりました。

指名をして児童が前にでてきました。でも聞く側の児童は多少ざわついています。そこで、担任の先生は “Are you ready?” と児童へ言いました。“Be quiet!” ではなく、“Are you ready?” と聞いたところに、担任の先生の言葉に対するセンスを感じました。「静かにしなさい!」と言われるより、やさしく「聞く用意はできたかな~」と言われたほうが、生徒の心には響きます。たぶん、担任の先生は、日本語でも普段からそのような言葉の使い方をしているのでしょう。児童はすぐに静かになりました。そこも見事でした。

静かになったところで発表する児童。みんなが注目しています。そして、“I want to go to America. I want to see the Major League. I want to see Matsui.” みごとな発表でした。感心したのは、この発表の中で、America, Major League, Matsui がゆっくり、はっきり発音されていたことです。中学校などで文法が強調され過ぎると(たとえばこの場合はwant to +動詞の原形)、生徒は不思議なことに、I want to go to までははっきり言いますが、肝心な行き先のところで声が小さくなったりします。I want to go to まで言えると安心するのでしょうか。これが文法優先授業の最大の弱点だと私は思っています。無意識にそうなるのでしょう。

しかし、コミュニケーション中心の授業をしているところでは、無意識かもしれませんが、伝えるべき重要な語が強く、はっきり発音されるのです。私は同じような表現を扱った中学校(すべてではありませんが)での生徒の発話と、コミュニケーション重視で進める小学校の授業を参観した時に、このことに気が付きました。当然、言葉はコミュニケーションのためですから、中学校の授業もコミュニケーション重視にしなければなりませんが、このことについては、また、別のところで述べたいと思います。

最後に、児童がALTの先生を交えて、本時の目標である「行きたい国を(友達に)尋ねたり、尋ねられて答えたりする」活動に移りました。児童が楽しく英語でコミュニケーションしている姿が印象的でした。

この授業の良さは「コミュニケーション重視」という考えが貫かれていたところだと思います。そのためには、生徒が本当に聞きたい、伝えたいと思う活動を授業の中心にしたところだと思います。

児童の注意は常に「意味」に注がれていました。だから、授業の途中でも「え!どこ?」「え!わざわざヒポを見にボツワナへ」などのささやき声が自然に児童の口をついて出てくるのです。機械的なドリル学習からは、けっして出てこないささやき声です。このささやき声がこの授業の良さを見事に表していると感じました。