宜野湾市立普天間中学校 赤嶺美奈子先生の小学校出前授業 2015年1月23日(金)

小・中の良さが混じり合う授業

~赤嶺美奈子先生(沖縄県宜野湾市立普天間中学校)の小学校出前授業~

 

「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」によると、2020年度には、小学校5、6年での外国語活動の教科化が予定されています。指導者については、英語の専門性を高めた学級担任及び中学校英語担当教師等の積極的な活用が求められています。今後は、これまで以上に、小・中の連携・協働が重要になってくるでしょう。

さて、2015年1月23日(金)、赤嶺美奈子先生(現在は宜野湾市授業改善アドバイザー)の小学校出前授業を参観しました。児童にとっては小学校を卒業する寂しさと中学校への進学に期待と不安が交差する時期です。対象は校区内にある宜野湾市立普天間第二小学校6年生。宜野湾市は英語教育特区に認定されており、小学校低学年で週1時間、中学年以上は週2時間の授業時数が確保されています。

本時の授業は「中学校での英語学習を体感し、4月からの授業の流れを把握する。また、海外からのビデオレターを視聴し、英語への興味関心を高める」となっていました。

授業は簡単な挨拶から始まりました。もちろん全て英語です。児童はやや緊張気味です。赤嶺先生は、小学校で学習した表現を使いながら、児童に好きなスポーツや食べ物などを聞いて、まずは、緊張感をほぐしていきました。

次に赤嶺先生は自己紹介をしました。児童は、これから進学する中学校の先生はどんな先生なのだろうと、興味津々に聞いています。赤嶺先生は、自己紹介に合わせて人気の漫画キャラクターや、好きなフレンチ料理や、旅行で撮ってきた写真などを黒板に貼っていきます。担任の先生との連携も十分に出来ていて、児童の実態も把握しています。話す英語は、かなり早いのですが、絵や写真を使い、繰り返したり、言い換えたりしながら、英語を聞かせていきます。

自己紹介のあとは、“What are my hobbies?”“What do I teach at Futenma Junior High School?”など、児童に対して矢継ぎ早に質問が発せられます。再び、児童の間に緊張感が走ります。しかし、児童も負けてはいません。これまでの外国語活動でやってきたように、分からない時は、堂々と“Once more, please.”と発話していきます。先生と児童の対話が、チェーンが繋がるように繋がっていきます。

次はメインの活動です。赤嶺先生はいろいろな国の友達から送られてきたビデオレターを用意していました。そして、その一つひとつを視聴させていきました。ビデオレターは、例えば、こんな感じでした。「Hi. My name is Katy. I used to live in Okinawa, Japan. Minako-sensei is my friend. (隣に座っているご主人を指して)This is my husband. (するとご主人が)Hi, my name is Earthen. I am from Malaysia. We live in Texas. (今度は奥さんが)We also have two cats. (猫を指して)This is Genki. He is also from Okinawa. (もう一匹の猫を指して)This is Mr. Chip. He is from Texas. He is a fat cat. Bye」ビデオを視聴した後は、“Do you want to go to America?”や“Do you like cats?”などの質問を挟みながら、再び、児童との英語のやりとりがチェーンのように繋がっていきました。

最後の7分は、振り返りカードを書かせ、数名の児童に感想を発表させました。児童からは、「今日の授業では、中学校でどんな授業が行われているかが分かった。これからも一生懸命英語を勉強して、英語が話せるようになりたいと思いました。」「今日の授業はちょっと難しかったのですが、中学校で英語を頑張りたいです。」などの発表がありました。

さて、この授業の最大の魅力は、何と言っても豊富なインプットと、豊富な児童とのコミュニケーションです。赤嶺先生からは矢継ぎ早にdisplay questions(答えを確認する質問)やreferential questions(関連する質問)が繰り出されます。そして、適度の緊張感を保ちつつ、授業の4分の3は英語での「やりとり」に費やされています。児童は、夢中になって英語を聴いたり、答えたりしています。

体育の時間に、4分の3は説明を聞き、身体を動かすことが4分の1だとしたらどうでしょうか。スポーツを楽しむこともできず、体力を付けることなど、とても無理です。赤嶺先生の授業はその逆で、4分の3は生徒がコミュニケーション活動を行っています。どちらがよいかは説明するまでもないでしょう。集中する時間が短い低学年や中学年の児童には、本時のような授業は無理かもしれません。しかし、高学年の児童にとっては、興味のある内容と聞かせる工夫さえすれば、児童は難なく英語を聞き続け、自分の考えを英語で述べることができることが分かりました。

前述したとおり、2020年には中学校と同様に小学校の高学年においても英語の教科化が実現していることでしょう。「中学校の前倒しになってはいけない」ということがよく言われます。しかし、それは文法中心の授業を前倒しすることに対する警告であり、コミュニケーション型の授業を前倒しすることまで否定しているわけではありません。コミュニケーションという点では小学校も中学校も同じ目標を持っています。

本時の授業は、さまざまな答えを次々と出してくる児童に対して、柔軟に英語で対応ができる中学校の先生の良さと、外国語活動で培われた英語への積極的な態度が、上手く噛み合った授業だと感じました。教科となる5、6年の授業は、これまでの中学校でもない、外国語活動でもない、小・中の良さが混じり合う本時のような授業内容になって欲しいと願わずにはいられませんでした。