Posted in 日々の想い

「専門性が高い」という意味

2018年11月22日 - 10:00 PM

「沖縄県の教員の資質向上連絡協議会」という機関があります。沖縄県の教育委員会と教員養成を担う県内の大学とが,教育実習や教員養成等について協議をする機関です。今年は第2回会議が11月16日に開催されました。協議題の一つは「小学校高学年の外国語は誰が指導すべきか」となっていました。興味深いテーマなので資料を取り寄せて読んでみました。

県教委は,小学校教員の指導力を高めて専科として指導できるように支援する方向性と,中学校教師に研修を行って小学校へ派遣する二つの方向性を示しています。極めて妥当で現実的な提案理由が記されていました。

ところが県内大学で中高教員養成をしている大学は,そのほとんどが,中高英語免許を取得した人を小学校で活用して欲しいという提案でした。その理由は「専門性が高い」ということでした。一つの方向性としては,それでよいとは思いますが,小学校教員の「専門性」についての言及はありませんでした。少し残念でした。英語指導力(英語力)が高いというだけで小学校での指導が可能だと考えるのは極めて危険です。小学校の先生は小学校教育の「専門性」が極めて高いのです。ですから,小学校の免許状があり,小学校で指導することが可能なのです。中学校の教員は中学校の免許状を持っていても小学校の免許状は持っていません。それは何を意味するのかを一方では考える必要があります。中学校や高等学校の教員養成だけに関わっている大学教員は,小学校の教育がどのようになされ,教員にはどのような資質や能力が求められているのかについては目が行かないのかもしれません。

高等学校校長会も中高の英語教師を小学校に派遣したほうがよいという提案でした。理由は同じく「専門性が高いから」です。「専門性」が高いなら,中高の英語教育も上手くいっているはずなのですが,それも,現実には上手くいっているとは言い難いのです。中学校では英語嫌いが増えており,高校では国が目標としている英検準2級程度に達している生徒は39.3%です。中卒レベルの高校生も多く2極化していると言われて久しくなります。小学校ではよく行われている「対話型の授業」も少ないことが指摘されています。もちろん,素晴らしい中高校の先生もたくさんおられて,中高で良い指導ができるなら,小学校でも素晴らしい指導ができることが大いに期待されます。しかし,一方では逆のケースも予想されます。

もちろん,会議資料だけからでは判断できないところもあります。口頭では県内大学も高等学校長会も,小学校教員の専門性について言及したかもしれません。確かに小学校教員の「専門性」に加えて,もう少し英語力が欲しいと思う時もよくあります。これまでの中高の英語教育が上手くいっていれば,小学校の教員も中高の英語教育を通して,小学校レベルの英語は指導できる力をつけているのが当たり前でしょう。国語や算数はこれまでの学校教育の中で小学校レベルの内容は十分教えることができているのです。しかし,英語だけは,それができていないと言えるのかもしれません。今回の資料に目を通してみて,「専門性」が高いということは,どういうことかを再度考えてみる必要があると感じました。

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