小学校外国語に関する質問への回答

2023年6月の研修会で頂いた質問への回答

Q1  授業の中で形成的評価を行い、児童にフィードバックを返すことが難しいと感じているのですが,どのように行うとうまく行くのでしょうか。さらっとでも1時間の間に全体を見ることがなかなか難しいなと感じているます。

A1  私が授業を見続けている沖縄県浦添市立港川小学校の神村好志乃先生はGoogleフォームで「ふり返り」をさせています。毎時間のクラスの様子が即時に把握でき,「今はまだ難しい」と選択した児童を直ぐに特定できるようにしています。そして,次の授業では即対応できるようにしています。紙データでも可能とは思いますが,Googleフォームだとクラスの全体の理解度も瞬時に分かり,授業改善にも繋がると話していました。Googleフォームを使うことが出来る環境にあるなら使ってみると良いと思います。

Q2  「指導と評価の一体化」ということで、具体的な活用例があれば教えていただけたらと思います。

A2  『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料』(文部科学省国立教育政策研究所)に具体的な事例が紹介されています。評価の方法も示されています。参考にされるとよいと思います。『参考資料』は文科省のHPからダウンロードすることも可能です。

Q3  「俺、わかんないから」と言って一切会話しない児童がいるそうです。(緘黙ではない)この場合は、評価は仕方なくCでよいのか。単語一語でも可なのか。ブレイクアウトルームで話題になりました。

A3  「俺,わかんないから」と言う児童は英語だけの問題ではないかもしれません。担任の先生を中心に多角的なアプローチが必要と感じます。C評価の児童はB評価にするように指導することは当然ですが,その結果B評価に届かない場合はC評価にして,保護者を含めて今後の指導を話し合う必要があると思います。

Q4  英語を習っている子と習っていない子で温度差を感じます。それに加えて学習意欲のある子とない子の温度差も感じます。楽しく活動をしようと思っても,生徒指導に時間を割いてしまい,ますます英語が嫌いになるのではないかと落ち込む日々です。外国語専科教員なので,週2回しかその学校に行きません。週3回行っている学校ではそのような悩みはありません。そのような学校で,私はどんな授業をしたら良いのでしょうか。

Q4  複数校で指導されている専科の先生方からよく聞く悩みです。特に小学校の場合は「児童をよく知っている担任が指導することが望ましい・・・」と言われてきたわけですから,専科の先生が指導する場合は,専科の先生方も指導する児童のことをよく知ったうえで指導できる制度設計が必要と感じます。少なくても,専科の先生は1校に張り付いて指導する環境を作る必要があるのではないかと個人的には考えたりします。しかしながら制度変更を望んでもそのようになるとは限りませんので今の環境でできる努力をするしかないとは思います。週2回行く学校では空き時間などがあれば,担任の先生方との話合いもできますが,その日は全て授業に当てられている先生も少なくありません。管理職の先生にも相談して,最低でも指導しているクラスのことについて担任の先生と話し合う時間を週1回程度とれるようにすると良いと思います。他教科はこれまでの指導の積み上げがあります。外国語は教科になってまだ4年目です。新しい教科ですので,学校全体で外国語の指導法や課題を共有することが大切と思います。

Q5 1クラスに30〜39人の児童がいる中で、レベルに差がありすぎてなかなか全員が理解し満足できるような授業ができないのですが、どのような工夫をすれば良いでしょうか?

A5  小学校に限らず,中学校でも同じような問題があります。他教科でも同じような問題があると思います。他教科と連携しながら多角的なアプローチが必要と感じます。私が昨年参観した宮古島市立平良第一小学校の砂川恵美先生は,ペアワークやグループワーク等を取り入れて,クラスで学び合い,教え合いを上手に仕組んでこの問題に対応していました。校長先生にお話しを伺うと,この問題も含めて学校全体で授業研究に取り組んでいるということでした。一斉授業ではなかなかこの問題には対応できないのではないかと思います。昔からの問題ですが,今でも問題とされていることは,解決が難しいということだと思います。あきらめずに挑戦していければと思います。

Q6  昨年までは外国人のALTだったので、児童も一生懸命英語で伝えようとか、ALTの話す英語を聞き取ろうと必死でした。しかし、今年は日本語ペラペラの日本人元教師がALTなので児童が英語で話そうとする意欲が低下してしまいました。「日本の文化を伝えよう」「おすすめを伝えよう」「自己紹介しよう」などでは、なぜ英語で伝えないといけないのか目的意識のもたせ方も難しいです。無理やり工夫してやっていますが、やはり、目的意識を持たせるということが1番難しいです。

A6 個人的な話で申し訳ありませんが,先週,ある中学校の授業を参観しました。日本人英語教師が一人で授業をしていました。授業はほぼ英語で進めていました。先生と生徒の間でも英語,生徒同士も英語でのやり取りが中心でした。このような授業はALTはおられないのですが,実生活での英語使用を前提とした授業構成となっています。教師が黒板に問題を書いて文法の問題を解かせるだけで終わる授業とは一線を画しています。ALTがいても,ALTをテープレコーダー代りの役割しか与えていない授業もあります。ALTがいるにも関わらず,児童生徒とのホンモノの「やり取り」がない授業も観てきました。ALTがいてもいなくても「実際に使うことを想定した授業」にすることが大切と思います。そして,ALTがおられるときは,彼らと実際に英語を伝えあってみる機会を多く設定すると良いと思います。ALTがいない場合は,野球でいうと,バッターボックスに入る前の素振りのような授業をイメージすると良いと思います。実際にバッターボックスに入るのですから,素振りはそれをイメージして行います。
最近ではネットを使って海外の児童生徒や外国人との交流を授業と連携させながら実践している学校も増えてきました。このような活動も授業と組み合わせならば,「実際に使うことを想定する授業➡実際に使ってみる授業」を繰り返すようにすると良いと思います。

Q7  大変有意義な研修でした。ありがとうございました。高学年の外国語では、書くことも大事ですが、発音とスペルのつながりについてもう少しお聞きしたかったです。中学校では、フォニックスをやっていると聞きました。小学校でも少しずつ取り組んでいく方が良いのでしょうか。まだ、外国語活動が導入されたばかりの頃は、小学校でもフォニックスに取り組んでいる学校もありましたが。

A7  英語の文字を音声化することはとても難しいです。ネイティブの子どもにとっても難しいですので,日本人学習者にはさらに難しいことになります。そこでフォニックスに頼ることを考えてしまうのではないでしょうか。フォニックスの効果については私の知る限りその効果は限定的なように思われます。英語教室などで週に複数回の授業があって専門的な指導を受けた講師が系統的に教える場合は「効果あり」の研究もあります。公立学校のように,時間が限られており,しかも,専門的な指導が難しい場合は,なかなかその効果も表れにくいようです。私自身は,小学校では「読むこと」の指導は限定的ですから,学習指導要領解説にあるように,「文字には名称の読み方と,その文字が表す音があることを認識する。発音と綴りを関連付けて指導することは中学校の外国語科で指導する(p104)」という判断が妥当であると考えています。言語習得のプロセスを考えても小学校の外国語では音声を中心としたほうが良いと考えています。日本語の「国語」においても,聞くことや,話すことができるようになってはじめて小学校1年生で文字が導入されていることを考えると分かりやすいのではないでしょうか。