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“理想を持てなかったら,生きている資格がない”

2019年4月8日 - 10:47 AM

今年も英語科教育法や外国語活動を担当することになりました。

さて,表題の“現実感覚がなければ生きていられない。理想を持てなかったら,生きている資格がない”は,私が30年以上前に読んだレイモンド・チャンドラーの小説『プレイバック』の一節です。30年以上も前に読んだ小説なので,ストーリーもあまりよく覚えていません。ただ,私立探偵の男が怪しい女を追っかける話でした。翻訳本ですから,いかにも“翻訳”という感じの日本語が多く,ところどころ意味不明の表現があったことはよく覚えています。そして,なぜか忘れられないのが“現実感覚がなければ生きていられない。理想を持てなかったら,生きている資格がない”という一節です。

私は大学を卒業して中学校の英語教師になりました。今では,想像できないかもしれませんが,当時は理想と情熱にあふれた細身の青年教師でした。現場の授業は困難を極めるものでした。授業がうまくいかない,生徒が暴れる,暴言を吐く,などは日常的に起こっていました。

授業がうまくいかないのは,こんな環境のせいなのだ。生徒に学習意欲がないのだからしかたがない。このような考えが頭をかすめることがよくありました。しかし,一方で,教師として,これでよいのか,という声も聞こえてきました。そんな時,私の頭を駆け巡ったのが『プレイバック』の一節です。

教育という現場では,さまざまな困難が待ち受けています。現実感覚がなければ,本当に生きてはいけないと思います。しかし,理想をもって授業に取り組んでいかなければ現実は改善されません。

学生のみなさんには,現場の現実をしっかり見て欲しいと思います。教育実習では,自分の理想としていた教室とは異なる現実と出会うかもしれません。しかし,現場のせい,児童・生徒のせい,と考えた時点で教師としての資格はありません!

2020年からは小学校の英語が教科化されます。中高も指導内容が高度化していきます。課題も山積しています。学生のみなさんには,現実を直視しつつ,しっかりとした理想を持った教師になって欲しいと思います。

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