生徒を積極的に授業に参加させるには(1)
“Tell me, I will forget. Teach me, I may learn. Involve me, I will learn.”という言葉があります。生徒を授業の中に巻き込み,生徒が主体的に授業に参加してこそ,学ぶ意欲も起こり,学習が促進されるものと思います。「ただ聴いているだけの授業」では,理解はできるかもしれませんが定着するかどうかは分かりません。いうまでもなく,英語が使えるようになることはないでしょう。
授業を参観していると,生徒が積極的になる場面があります。それはどういう時かというと,生徒自身と関わりのある場面が出てきた時や自分の考えなどが表明できる時です。例えば野球が好きでたまらない生徒にとって,先生が“baseball”という単語をひとこと言っただけで反応することがあります。自分と関わりのある野球のことですから,当たり前と言えば当たり前なのかもしれません。
この理屈で考えると,例えば,<give+人+物>の文型を導入する場合,“Taro gave Akiko a pencil.”という例文を見せられると生徒の思考は「太郎って誰?明子って誰?鉛筆あげてどうするの?自分と関係ないし・・・」というようになり,そんな文だけを見せられ続けたら興味もわかないし,そもそも意味も考えなくなるし,集中力も続きません。
それと比べて,たとえば“Mr. Yonamine gave his wife a new tennis racket on her birthday.”だとどうでしょうか。生徒の思考は「私達の英語の先生である与那嶺先生が,どうも奥さんの誕生日に,新しいラケットをプレゼントしたようだ。奥さんはテニスをやるのかな?そういえば与那嶺先生はテニス部の顧問だし。あとで先生に聞いてみようかな・・・」というふうになるのではないでしょうか。
導入に使う例文であっても,練習問題で使う問題文であっても,生徒と関わりのある人物や興味のある物などを使うことによって生徒は授業に積極的に参加するようになるのではないでしょうか。
もう1つ,生徒が授業に積極的になるのは,自分の考えなどを創造的に表明する機会がある時です。先日の実習生の授業で“Who is …?”という文型を学習する授業がありました。授業は生徒自身が「何かを考えてやる」という場面がなく,どちらかというと,生徒の授業への関わりは消極的なところがありました。
ところが授業が終わってしばらく見ていると,授業中は元気がなかったSさんが「校長先生,怪物ってなんていうのですか?」と聞いてきました。なんと,授業は終わっているにも関わらず,授業の最後で出された宿題に取りくんでいるのです。この宿題は「自分の好きな人物を描き,その人物の予想がつくように3つヒントを考える」というものでした。生徒は自分の友達のことを書きたくて,なんとそのヒントとして monster を使いたかったようなのです。
自分の友達のこと(つまり,自分の気持ちや考えを発揮できる時)を書くときに,やはり最も意欲的になることが,この観察からも分かりました。授業の中でも宿題に出したような「自分の考えを表明できる課題」を取り入れていれば,生徒はもっと積極的に授業に取り組んだかもしれません。ちなみに,自分の友達をあてさせるヒントとして She is a monster. は不適かもしれません。私は「いくら何でもこのヒントはまずいのではないですか」とSさんに言いました。彼女も少し考えていました。自分で考えた文が冗談として通じるかどうか考えたのでしょう。いずれにしても,クリエイティブな活動は生徒を積極的にさせるという例だと思います。次回の授業でこの活動がどのように展開していくのか楽しみになりました。