2013年6月10日 浦添市立浦添小学校の授業

浦添市立浦添小学校5年3組

授業者 HRT:  M先生   JTE: T先生

 

担任の先生は琉球大学教育学部を卒業した3年目の先生です。クラスコントロールが上手くできていて、やんちゃな児童が何名かいましたが、担任の先生は、彼らに発言の機会を十分与えながら授業が展開していきました。また、とても明るい雰囲気の中で授業が展開されました。小学校の外国語活動に限らず、中高においてもコミュニケーション活動を行う際は、クラスの支持的風土、明るい雰囲気、仲間同士の信頼関係などがないと上手くいきません。夫婦喧嘩をしている夫婦に楽しい会話などできません。(私が夫婦喧嘩をしているという意味ではありません。念のため)間違うかもしれない英語ならなおのことです。

 

本時のねらいは①どんな料理なのかを尋ねたり、答えたりする表現に慣れ親しむことができる。②スリーヒントゲームを通して友達と積極的にコミュニケーションを図ることができる、となっています。以下に授業の展開にそって私の感想を述べたいと思います。

 

○まず、英語での挨拶を行いました。普通は担任教師のほうで “How is the weather today?” “What day is it today?” などと聞くのですが、この授業ではボランティアの児童が7人ほど前にでてきて担任の先生に代わってクラスのみんなに質問しました。クラスのみんなは質問した児童に答えていきます。

 

○その後に、担任の先生が何名かの児童に “How are you?“と聞いていきました。児童は“ I am OK!” “I am happy.” などと答えていきます。児童のほうから担任の先生へHow are you、XX-sensei? と聞きましたが、担任の先生は「I am お腹が痛い」、と答えていました。そして、次に、JTEの先生に “How are you?“ と聞いていきました。担任の先生はお腹が痛い(その表情から、本当はそんなに痛くなかったかもしれません)と言って終わってしまいましたが、ここは “How do you say ‘Onakagaitai’ in English?” とJTEに聞いても良かったと思います。せっかくJTEがいるのですから、「お腹がいたいを何というのだろう」と児童と一緒に尋ねると新しい表現も学べるチャンスになったかもしれません。

 

○次に“Are you hungry?”の歌を歌いました。その後、料理の名前(hamburger, spaghettiなど)をチャンツで練習していきました。これは前時の復習です。テレビモニターには料理名がテンポよく出てきました。料理名の練習のあとはJTEの主導で”How does it taste?” “It’s spicy.” “Where is it from?” などを練習していきました。

 

○練習のあと黒板に書かれた今日のゴール(スリーヒントクイズを出したり、答えたりしよう)をみんなで確認しました。黒板には、辛い、甘い、酸っぱいなどをした表情の子どもの絵があります。また、ヒントになる料理がどこの国のものかを示す国旗の絵が貼られていました。

 

〇児童がクイズを行う前に、JTEがやり方をデモンストレーションして示します。児童は4人1組になって前へ出てきます。そしてヒントを出します。他のグループはそれを聞いて、小さなホワイトボードに答えを書きます。スリーヒントクイズを全部出し終わったら、小さなホワイトボードに答えを書いた児童が教室の横に並びます。そして、一斉にホワイトボードを出します。スリーヒントクイズは、分かった段階で児童が答えを言ってしまうことが多いのですが、この方法だと、最後までヒントを聞くことになります。最後まで聞かせたあと、小さなホワイトボードに書かせる工夫はとてもよいと思いました。

 

〇いよいよ本時のメインであるスリーヒントクイズが行われました。児童は前もってヒントを作り、練習をしてきています。例えばこんな感じスリーヒントクイズが行われました。

ヒントを出す児童のグループ:Hint number one. It’s noodle.

答える児童のグループ:(一斉に)How does it taste?

ヒントを出す児童のグループ: It’s sweet.

答える児童のグループ:(一斉に)Where is it from?

ヒントを出す児童のグループ:It’s from Italy.

そして、答える児童のグループは相談して答えを小さなホワイトボードに書いていきます。

 

〇このようなスタイルのスリーヒントクイズゲームが全グループで代わる代わる行われていきます。

 

〇最後に振り返りカードを書き、何名かに発表させてこの授業は終了します。

 

この授業は「スリーヒントクイズ」がメインになっています。ヒントを作る段階で、児童は料理の材料や、味や、どこから来た物なのかを考えることになります。そして、それらを表す表現を覚えていきます。発表するわけですから意欲も高まります。また、授業の中では見られませんでしたが、準備の段階でどんなヒントを出したら楽しく活動ができるのかを考えたことだと思います。グループで協力しながらヒントを作っていく活動は児童が学び合う機会になります。外国語活動ではグループで協力しながら課題に取り組むことが多いのですが、外国語活動の副産物として学級作りにも役立ちます。これは外国語活動の素晴らしい点と思いました。

 

スリーヒントクイズは児童同士がお互いの英語を聞き合う活動として適した活動です。ヒントを出す側も「分かって欲しい」とい気持ちがあります。聞く側も「答えを当てたい」という気持ちで一杯です。『伝えたい・分かりたい』という状況の中で英語が使われていきます。伝えたいという気持ちがなければ、うまく伝わりません。聞きたいという気持ちがなかったらどんなに素晴らしい発音でも聞こえてきません。この活動はその点ですぐれた活動と言えるでしょう。

 

授業の後に、児童の振り返りカードを見せてもらいました。その中に「私たちのクイズにみんなが楽しんでくれて良かったです」というのがありました。児童は、このスリーヒントクイズを「相手を楽しませる」という観点からも考えています。コミュニケーション能力は単に情報や事実だけを伝える能力ではありません。相手を楽しませたり、場を和やかにしたりすることは、情報や事実を伝える以上に、高度なコミュニケーション能力です。そのような感想が書かれていることに、私はびっくりすると同時に、このクラスでは豊かなコミュニケーション能力が育まれていることがわかりました。もちろん、それは外国語活動のみで達成されるものではありません。学校生活の全体をとおして育まれてこそ、外国語活動でも活きてくるのです。

 

少し改善が必要と思われるのは以下の点です。

 

  • JTEの英語をたっぷり聞かせる。

自然な文脈の中で英語を聞くということは言語習得の観点からもとても大切です。本時のねらいは「料理名、国名、味などに慣れ親しませる」ことです。そこで、JTEが、自分が食べた面白い料理などについて、易しい英語で聞かせる場面があれば良かったと思います。外国で面白い料理を食べた経験などがあれば、それを表情たっぷりに英語で話してあげるとよいでしょう。また、材料などを、ヒントを出しながら児童に答えさせるのもよいかもしれません。これは Teacher talk と言われるものです。JTEの先生の自然な英語を聞いて、理解していくというプロセスを、できれば毎回授業の中に取り入れて欲しいと思います。もちろん、担任の先生がやってもかまいません。児童は興味津々に担任の英語を聞くことでしょう。

 

  • 英語の発音とともに、英語の言い方を示して欲しい。

児童が言えなかった表現をJTEが与えて欲しいと思います。また、それとなく正し発音を示してほしいと思いました(児童の英語をしつこく直す必要はありません)。児童はジェスチャーなどを使って何とか伝えようとしています。それはとても素晴らしいことですが、児童が必要と感じる時にタイムリーにその単語を与えるとそれは児童のものになっていきます。いつ使うか分からない時に与えられるよちも、必要な時に与えられたほうがずっと効果的です。また、プリンやソーセージなど日本語になっているものもあります。児童が「プリン」と言ったときに、さりげなく英語の発音を聞かせることで、児童には気づき(似ているけれど発音が違うのだ!)を起こさせることができます。

 

  • ふりかえりカードに「気づき」を入れて欲しい

ふり返りカードには感想を書くところがあります。感想だけでなく、「気づき」を意識して書かせるとよいと思います。授業は、これまで気がつかなかったことに気づいていくことだと思います。児童は、本当は様々なことに気づいているかもしれません。しかし書かせてみないとそれが分かりません。それを書かせることによって、その気づきをクラス全員のものにすることもできます。ぜひ『気づいたこと』も書かせて欲しいと思います。