F中学校A先生の授業:2013年9月5日
F中学校
授業者 A 先生
日 時 平成25年9月5日
学 級 2年A組
素晴らしい授業をするというA先生の事を聞き、さっそくA先生の授業を参観することにしました。「授業参観していいですか」と聞いたところ「いつでもどうぞ」という返事でした。連絡をとった次の日に授業を参観しました。
特別に準備した授業ではなく、いつもの授業を参観させていただきました。授業を参観するつもりで教室の背後に立っていましたが、生徒が一人欠席していたためペア活動要員として生徒の一人になって授業を受けることになりました。
私のようなどこの誰かわからないオジサンをあたたかく受け入れてくれた2年A組の皆さんにとても感動しました。コミュニケーション活動を行うには、「クラスの雰囲気が良いこと」が絶対条件だと思います。ギスギスした雰囲気の中で、英語でコミュニケーション活動をすることなど不可能でしょう。そういう点からすると、授業の最初の段階で、「このクラスではコミュニケーション活動が上手く展開するだろう」という印象を受けました。なんと授業が終わった後に「先生、また来て下さい!」と声をかけてくれた女生徒がいました。とても嬉しくなりました。さて、授業の感想を授業の流れに沿って書いてみます。もちろん、私の思い違いや誤解もあるかもしれません。その時はご容赦下さいますようにお願いします。
【11:55~12:00】
まず、英語で天気や曜日の確認をしました。この活動は何を目的にやるのかを明確にする必要があると思います。毎日やっていると「機械的」な活動になりコミュニケーションという点からは検討する必要があるかもしれません。It rained yesterday. How is the weather today? と聞くならコミュニカティブになります。天気に絡むTeacher Talk をしながら今日の天気を聞くこともよいでしょうし、9月5日に生まれた芸能人の話と絡めて日付を確認することも1つの方法です。いずれにしても、routineな活動から、生徒が驚くような話で始めるのも授業を活性化する1つの方法だと思います。英語でやれば、もちろんリスニングの力も付いていきます。
【12:00~12:07】
縦20センチ横10センチほどの紙片をつかって「英単語テスト練習」というのをやりました。10個の単語があって「英語⇒日本語」、「日本語⇒英語」が混ざっていました。10個の単語は以下のようなものです。1.パンなどを焼く,2.salad,3.栽培する,4.take care or … , 5. 世話・保護、 6.coffee, 7.魚、 8.organic, 9.パン、 10.vegetable 単語10個の他に、「Yesterday’s 1文」というのがあって、昨日学んだ1文を書くようになっています。今日のYesterday’s 1文は「私は野球をすることが好きです」を英語で書くというものでした。私の隣に座っている生徒の紙片を除くと「3.栽培する」「5.世話・保護」が出来ていないようでした。Yesterday’s 1文を入れて11問題あり、7点以上が目標になっています。テストの後は、教師が正解を黒板で示し、赤ペンで自己採点をします。そして提出です。この活動は毎時間やっているようです。毎日やるには教師が負担を感じずにやれることが条件です。テストをやり教師が採点するといくら時間があっても足りまません。「自己採点」にしているところが長続きの秘訣でしょう。地道な活動ですが、間違いなく力がついていく活動だと思います。
【12:07~12:10】
英単語テストを終わると、Today’s Can-doが示されました。今日のcan-do は「動名詞を使って表現することができる」でした。指導者は「私はつりをすることが好きです」という日本語を黒板に書き、「それを英語にするとどうなるか」と投げかけながら I like fishing. と答えを示しました。また、「『ジョンはピザを食べる事が好きです』を英語にすると」と言いながら John likes eating pizza. を黒板に書きました。ここは本時のキーセンテンスである動名詞の形を示すところですから ing のところに赤線を示すなどをするとポイントがもっと明確になり良かったかもしれません。また、たとえ例文であっても、できるだけauthentic な文を作ることが記憶にも残ることと思います。どこの誰か分からないJohn を例として使うより、クラスの誰もがピザが好きだと知っているAさんを使い、A likes pizza. にすると、Aさんを見るたびにA likes pizza. という文を思い出すかもしれません。ちょっとしたことですが、そのほうが覚えやすいのではないでしょうか。
【12:10~12:20】
次に本時のターゲットである “Do you like …ing?” を使ってビンゴ・インタビュー活動に入りました。この活動は縦・横5つのマス目があり、その中には skiing, swimming , studying math 等が書かれています。その語を使って教室を動き回り Do you like skiing? などと聞いていきます。相手が“Yes, I do.” と答えたら相手の名前を書き、No, I don’t. ならば名前を書くことができません。そのようにして名前を書きながらマス目を埋めていき,
いくつビンゴになるかを競う活動です。前述したように、このクラスはとても明るい雰囲気のクラスです。この活動には一人残らず全員が楽しく相手にインタビューしていたのが印象的でした。この活動では、楽しみながら目標文である “Do you like …ing?”を何度も練習することになります。また、授業開始から20分程度たったところで(集中力が切れそうなところで)、この活動を入れたのも良かったと思います。私自身は“Do you like skiing?”や “Do you like studying math?”などは多分“Yes.”はないだろうと予想しながら、そのような質問のマスは避けて質問をしていきました。あっという間にビンゴになりました!
【12:20~12:25】
前述のビンゴ・インタビューのシートには、下のほうに「自分がインタビューした人の中から3人を選び、その人が好きなものを英文で書く」欄がありました。「黒板に書きたい人?」とクラスに投げかけると、3人を除いて全員の手が挙がりました。生徒は次々に黒板で英文を書き始めました。Haruka likes studying English. やMr. Ken likes watching TV. なども出てきました。ビンゴ・インタビューは動名詞を使った疑問文の練習。そしてこの活動は他者のことを紹介する肯定文(3人称単数現在形)の練習になっています。授業が丁寧に計画されていることが分かります。前の活動が次ぎの活動に繋がるように授業が計画されていて生徒にも負担がありません。無駄のない授業展開だと思いました。
【12:25~12:36】
次に単語の導入に入りました。フラッシュカードを使った単語の導入でしたが、導入後にその単語を使って文を作らせたところが良かったと思います。生徒は友達のことを思い出しながらHaruka bakes cake. などの文を作っていきました。vegetable の単語を示された生徒が I love vegetables. とlove を強調しながら表現した時にはクラスから笑い声が出ました。単語は理解するだけでは不十分で、それを使いこなすことが大切です。そして自分なりのオリジナルの文(たとえlove という一語であっても)を作る時に意欲が高まります。導入後にすかさずその語を使った文を作るのは簡単そうに見えてなかなかできるものではありませんが、このクラスではそれを難なくやっていました。おそらく、毎回、そのような練習を行っているのでしょう。そのような“口頭英作文”の練習が実際の会話に繋がっていくと思います。とてもよい活動だと思いました。
【12:36~12:45】
単語導入の後はテキストを開かせ、テキストのPractice にあるリスニング問題に取り組みました。リスニングは「幸司たちに誕生日プレゼントをあげることになりました。ボブの話を聞いて、3人にぴったりのプレゼントを選び、線で結ぼう」というものです。問題文のスクリプトを音読の上手な生徒を指名してさせました。指名された生徒は上手に読み上げ、指導者から大いに褒めて貰っていました。リスニング問題なのでCDなどを使ってやる方法もありますが、読みの上手な生徒に当てて大いに励ましてあげる方法も教育的な点からは重要かもしれません。また、教科書を読んだ後「彼らは何を栽培しているの?」「何を楽しみにしているの」などの質問を与え内容理解のチェックを行いました。ここは英語で質問しても良かったかもしれません。難しい場合は英語と日本語でもよいかもしれません。教科書の内容理解チェックは教師が自然な場面で、英語で質問できるチャンスですし、生徒は自然な文脈の中で質問に答えることになります。それを全て日本語でやるのはもったいないと思います。最後に今日の一文ということで Haruka likes studying English. を板書して授業が終了しました。
【授業を振り返って】
〇授業の展開が細かく計画されており、無駄や無理がありませんでした。振り返ると50分の授業の中で様々な活動を行っていることがわかりました。
〇終始明るい雰囲気で授業が展開されていました。「教室に笑い声がある」というのが一番よい授業の条件だと思います。
〇改善点と思われるのは指導者にもう少し英語を使った授業展開を心がけて欲しいという点です。授業展開に必要なClassroom English はもちろんのこと、授業の様々な場面で生徒と英語でやりとりすることが特に口頭による英語によるコミュニケーション能力を高めていくと思います。例えば I like fishing. と答えた生徒がいれば How often do you go fishing? と畳みかける質問をしても良いのではないでしょうか。そのような身近なテーマを題材とした対話を1往復から2往復、2往復から3往復というように指導者と生徒の間で行っていくことがコミュニケーション能力の向上には欠かせないのではないかと思います。それと併せて授業の初めにちょっとしたことを英語で話す“Teacher Talk”なども入れると生徒は指導者の英語を日本人英語話者のモデルとして考えるようになると思います。生徒がネイティブのようにはなれないけれど先生のように話したいと思うことが大切と思います。
〇基礎力を付けるという意味では「yesterday’s 1文」はとても効果があると思います。キーセンテンスを覚えていく活動です。できたら、それにプラスして自分で文を作る(創造的英作文)という活動もいずれ行うと面白いと思います。生徒は創造することに知的喜びを感じるものです。自分が思っていることや感じていることをキーセンテンスと重ねて表現させることができないでしょうか。