Posted in 日々の想い

ハイコンテクスト環境を活かす

2018年11月25日 - 11:38 AM

ハイコンテクスト環境を活かす

高校生の頃に「嵐が丘」という映画を観ました。映画の中で女主人公が寡黙な男性に対して「何も言わないのは,いないのと同じよ!」というセリフがありました。当時は「男は黙ってサッポロビール」というコマーシャルが流行っていた時代でしたから,その言葉はとても衝撃的でした。

その後,大学で英語教育を学ぶようになり,エドワード・.ホールが唱えた「ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化」という考え方を学びました。共通の文化や経験,価値観があると,伝える努力やスキルがあまりなくても,なんとなく通じてしまうという環境のことをハイコンテキスト文化と言います。逆に,共通の文化や価値観がない環境はローコンテクスト文化と言い,言葉で伝える努力をしないと理解してもらえません。他民族国家の代表であるアメリカやイギリスは,まさしくローコンテクスト環境と言えるでしょう。ですから「何も言わないのは,いないのと同じよ!」というセリフが出てくるのでしょう。一方で,昔の(?)の日本のように共通の言語や文化,価値観を共有している文化では,何も言わなくても「黙ってサッポロビール」を飲んでいれば通じてしまうということもあるのでしょう。私のような年代の人は,その頃のことを懐かしがっている人が多いのではないでしょうか。

ところで,小学校の外国語活動を参観していると,担任の先生と児童が英語でやり取りをしているのですが,参観者には,あまりよく理解できないことがあります。でも担任の先生と児童はお互いに十分に理解し合えているのです。考えみれば,担任の先生と児童は毎日,毎日,同じ教室にいますので,共通の知識や体験を共有しているので,理解しやすい環境が作られているのでしょう。夫婦間でも言葉を発しなくても分かり合えるというのと似ているかもしれません。

さて,外国語を学ぶ時は,このハイコンテクストな環境はメリットなのでしょうか?それともデメリットなのでしょうか?これまでの外国語習得研究では文脈(環境,場面,状況など)や既習の事項を活かすことの重要性が指摘されています。分かりやすい場面の中で,既習事項を踏まえながら,新しい文法や語彙を導入すると理解しやすく,言語習得に繋がりやすいということです。

このように考えると,担任の先生の話す英語の内容は,児童にとっては既に知っていることが多いのかもしれません。ですから,参観者にはわからなくても,担任教師と児童の間では分かってしまうということもあるのかもしれません。だとすれば,担任教師が英語の授業を担当することはメリットということになります。教室内の英語がピジン化(教室内だけでしか通じない)することは避けなければならないのですが,このメリットを活かさない手はないと思います。

Leave Comment