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外国語活動における「慣れ親しみ」
「外国語活動・外国語研修ガイドブック」(文科省)には「『慣れ親しむ』というのは改訂前の学習指導要領でも使われている表現で『知識及び技能』の定着を直接的なねらいとするものではない」と示されている。例えて言えば,それは浅いプールでの「水遊び」のようなものである。水に慣れ親しめば,水を恐れることもなく,もっと深いプールで泳ぎ方を身に付けたいという意欲も湧いてくる。
従来の英語教育では中学校に入学した段階でほぼ同時に4技能を取り扱うことから,指導上の難しさがあると指摘されてきた。つまり,これまでは英語を十分に聞くこともなく,いきなり「話せ」と言われたり,また,文字や単語の読みもままならないうちに,「読め」「書け」と言われていたようなものである。言語習得の研究からも,話す前には十分に聞くことが必要で,「書ける」ようになる前には,十分に文字や単語や表現に慣れ親しんでいなければならないということがわかっている。これまでの英語教育の枠組みでは「慣れ親しむ」段階がすっぽりと抜け落ちていたと言ってもいいだろう。授業についていけず,英語嫌いになっても不思議ではない。
中学年の外国語活動では目標として「外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむようにする」と示されている。高学年の外国語においても,アルファベットの大文字・小文字に十分に慣れ親しむこと,また,音声で十分に慣れ親しんだ表現に限って,読んだり,書き写したりすることが導入されることになっている。外国語は,音声においても文字においても日本語とは異なっている。それは「歩くこと」と「泳ぐこと」とが異なっているのに似ている。児童にとっては日本語と異なる初めての外国語である。慣れ親しむ段階が必要である。慣れ親しんでもいないのに,定着を急いで,無理な指導をすることは避けなければならない。
「慣れ親しむ」という段階が設けられた意義を十分に理解した上で授業づくりをすることが今回の学習指導要領の目標を実現させる鍵となる。