英語授業マイスター発掘プロジェクト

2019年1月26日 - 6:24 PM

沖縄県には県教委が主管する「英語教育小中高大連携委員会」というものがあります。この委員会の活動の一つは「英語授業マイスター発掘プロジェクト」です。これは,県内の小・中・高等学校で素晴らしい授業を行っている先生方を発掘し表彰するというものです。私もこのプロジェクトに関わっています。
今日は小中高大連携シンポジウムに先立ち平成30年度のマイスター表彰式が琉球大学で行われました。受賞の挨拶を聞いていると,どの先生も,英語教師という前に,教師としての魅力を感じさせてくれました。共通しているのは児童生徒に対する「思い」が強いということです。受賞者の先生方からは「この生徒たちを,他の先生方にも見てもらいたいという気持ちでマイスターへ応募しました・・・」「生徒のポテンシャルを信じることが授業改善には必要です・・・」「生徒の自己肯定感を大切にしたいという思いで授業を行っています・・・」などの言葉がありました。私は,このような先生方の教室では「間違えても大丈夫,もっと英語を話してみよう」という児童生徒は増えてくるものと確信しました。
今日は,ある受賞者の所属校の校長先生も参加していました。自分のことのように喜んでいました。校長先生が背中を押してくれたからこそ,先生方も応募する気になったと思います。児童・生徒が素晴らしい英語教師によって育つように,教員もまた素晴らしい管理職の先生方によって育っていくのかもしれません。受賞者のみなさま,おめでとうございました!

2019年1月21日 福岡県M小学校の授業

- 11:48 AM

2019年1月21日 M小学校の授業

音声と意味のバランス(M先生の授業から)

2018年12月27日 - 12:51 PM

181220_M先生の授業

2018年11月29日 We can!1を使った頻度を表す語の指導

2018年12月17日 - 7:02 PM

2018年11月29日,神村先生の6年生の授業を参観しました。教材は「We can !1 のUnit 4」。5年生用の教材ですか,指導者の神村先生によると,前年度にこの単元の内容を実施していないので取り上げたということでした。

【授業の流れ】

1.Sound Tennis(Tで始まる単語を言い合う)

Tennis, Thursday などが出てくる。

全体でやったあとにペアで行う。

Tea, toilet 等がでた。

2.Small Talk(ALTに家での仕事について聞く)

3.Who am I gameを行う。

6年生を担当する3人の担任の先生の写真を電子黒板で写す。

ヒントを聞いて誰のことかを当てていく。

I usually wash the dishes.

I sometimes clean my room.

I never cook dinner.

Who am I?

答えがでたら実際に担任の先生が自分の家での仕事を言う動画を見せる。

4.今日のめあて(家での役割についてインタビューし合う)

5.インタビューをし合う。聞いたことをワークシートにまとめる。

A: Do you wash the dishes?

B: Yes, I sometimes wash the dishes?

A: Do you clean your room?

B: No, I never clean my room.

6.インタビューの感想を発表する。

児童の発表には以下のようなものがあった。

・女の人がよく家事をしているように感じた。こんなところから,大人になって家事をする人が女だと決まるんだと思った。

・Never とsometimes が多かった。

・I cook dinner. がsometimes が多かった。

・Cook dinner が以外といなかった。

7.振り返りカードへの記入

【良かった点】

①本時の目標である頻度を表す語(usually, sometimes, never)を学年の先生方が家でやっている仕事を紹介するという形のクイズにしたのは良い考えだったと思います。また,回答は実際に本人がVTRに登場して,その答えを英語で言っていました。学年を巻き込んだ授業づくりになっていたことが良かったと思います。このようなVTRを作成しておくと,いろいろな場面で編集して使えることもありますので,教材としてストックしていくとよいと思います。

②授業者が児童と「対話」をしながら授業を進めていたこともよかったと思います。おそらく,この小学校の特徴だと思いますが,どの教科においても,対話型の授業がなされているように感じます。また,クラスには支持的風土が醸成されています。他教科でも行っている「対話型」の授業をうまく英語の授業にも取り入れていることが良かったと思います。

③指導者は終始,適切な声量と,場に合わせた英語を使っていました。落ち着いた授業展開でした。

④電子黒板(動きがあるもの)と黒板(貼っておいて,絶えず参照するもの)の長所を活かした使い方がなされていました。

【今後の課題】

1.Sounds TennisでTで始まる単語を言わせました。Tennis, tea が出るのはよくわかるのですが,Thursday が出たのには驚きました。繰り返し見ているので発音は/t/ではないのですが,Tで始まることを覚えていたのでしょう。文字を繰り返し見ることによって,音と文字の結びつきについても慣れ親しんでいくのだと思いました。

全体で取組ませたあと,ペアでも取り組ませたのですが,児童によっては難しい活動であることも分かりました。Tで始まる語が一語も出ない児童もいました。これは全体での活動にとどめて,分からない児童が「自分にはできない!」という感情を持たないようにする配慮も必要かもしれないと思いました。決してやさしい活動ではありません。このような難しい活動は全体で行い,文字と音の関係に負担なく慣れ親しませることが大切ではないかと思います。

2.3人の先生の家での役割を「Who am I game」にしたのは良い考えだったと思います。他のクラスの担任の先生が普段どんなことを,どのような頻度でしているかを知るよい機会になったようでした。しかし,児童の興味はclean my roomや,cook dinnerなどに向いていて,頻度(usually, sometimes, never)などには向いていないように見えました。

3.児童がインタビュー活動を行いました。洗濯している絵や,掃除をしている絵がついたワークシートを用いて活動をしているので意味の理解は容易だったと思われます。児童の活動をみているとDo you wash the dishes? と訊かれて I sometimes までは答えられたのですが,その後が続かないことが多くありました。ここでは,get the newspaper, take out the garbage, water the plantsなどが出てきますが,それらの表現に慣れ親しませないうちに頻度を表す語を入れるのは難しいと感じました。簡単に言うとget the newspaper の表現が十分に言えるようになった後だと,頻度を表す語(usually, sometimes, never)の導入がスムーズにいくのですが,get the newspaper がうまく言えない段階だと頻度を表す語を導入しても,児童がそれをintake するのは難しいということです。言語習得の教科書に書いているとおり,十分に慣れ親しんだものの上に新しいものを追加した時に,それに注意が向き習得が可能になります。このように考えると,この教材自体がかなり難しいことを要求しているようにも思われました。もし,頻度を表す語に注意を向けさせることが目標なら,質問は Do you clean you room? のみにして,答えをalways, usually, sometimes, never から選ぶようにすればよいかもしれません。例えば以下のような感じです。

A: Do you clean your room?

B: Sometimes.

こうすると児童の注意はalways, usually, sometimes, neverに集中することになり,頻度を表す語についてのintake もスムーズに進むのではないかと思います。

3.インタビューの感想で,「女の人がよく家事をしているように感じた」というのがありました。これは他教科でも学習した内容だったのか,それともこの授業をとおして発見したことであったのかはよくわかりませんでした。いずれにしても,このようなことを外国語活動を通して学ぶ(発見する)ことは内容重視の授業展開になっている証拠で,望ましいことではないかと思いました。「Cook dinner が意外といなかった。」と感想を述べた女児がいましたが,私自身はdinner をつくらない児童が多いのが当たり前だと思っています。ひょっとしてこの女児は母親の仕事(夕食の準備)を一手に引き受けているのかもしれないと逆に不安になりました。子どもの貧困が社会問題化しているなか,この発言をした児童について,しっかりと注意して見ていく必要があると感じました。

赤嶺美奈子先生のセミナー

2018年12月1日 - 5:26 PM

2018年12月1日(土)今日は,赤嶺美奈子先生(伊江村立伊江中学校教頭)を迎えて学生と現職教員のための英語教育セミナーをしました。もともと私の教職実践演習を受講している学生のための講義の一環として企画したのですが,現場の先生方にとっても必要なものかもしれないと思い立ち,現場の先生方へも呼びかけて実施したものでした。

66人の参加者のうち,30人は現場の先生方でした。しかも沖縄本島からはとても遠く,飛行機や船を乗り継がないと来られないような離島からも数名の先生方が駆けつけてくれました。同じ学校から誘い合って英語科全員参加の学校もありました。

赤嶺先生は,現在は教頭先生をされているのですが,現職の英語教師をしている時代から,私は何度も授業を参観してきました。教室はいつも生徒の笑い声にあふれていました。そして誰一人として置き去りにされている生徒はいませんでした。生徒との英語の「やり取り」を中心に授業が展開していきました。ほぼAll Englishでした。

今日は学生を生徒に見立てて模擬授業形式のセミナーが展開されました。時には教材作成の裏話を語り,また,時にはseriousな問題を私たちに投げかけ,英語教師の意識改革を強い口調で求めてきました。笑いと緊張感が走るセミナーとなりました。

受講者の感想を一部紹介します。

〇セミナーを受けていることを忘れて楽しんいる自分がそこにいました。こんなふうに生徒を夢中にさせる授業がしたいと思いました。(学生)

〇今回のセミナーを受けて英語の授業に対する姿勢が自分の中で大きく変わりました。(学生)

〇今の英語教育に何が求められているのか,子供たちは何を求めているのか,教師はどういう手立てが必要か等,考えさせられる場面が多くありました。

〇教師になりたいという気持ちがさらに強くなり,現場にでて実践したいと強く思いました。(学生)

〇今の私に足りない事は,生徒達の実態に即した授業を創っていないことでした。ここが問題でした。その事に今日気付かせて頂きました。(中学校教員)

〇生徒の実態に寄り添い,教材や教具を日常生活の中からピックアップしていくことは,やはり重要だと感じました。美奈子先生の豊富なアイディアに感動しました。(中学校教師)

〇忙しさを理由にせず,子供の興味のあるものは何かを考え,いろいろな仕掛けを授業の中に取りいれていきたいと思いました。(中学校教師)

〇勉強不足なのを日々感じていました。相談できる先輩が少ないので,これからも美奈子先生のセミナーに参加したり,直接メールしたりして勉強したいです。(小学校教員)

〇これまでの授業内容を見直すよい機会となりました。もっと勉強したい,もっと指導力を高めたいと強く感じました。美奈子先生に会いに伊江島まで足を運びます。いろいろと教えてください。(中学校教師)

「児童生徒のために自分がいる」というのは美奈子先生の口癖です。医者を必要としているのは,病気の人です。コミュニケーション能力は誰にとっても必要です。一人も置き去りにしない授業づくりを,私も,学生や現場の先生方とともに創っていきたいと思いました。

ハイコンテクスト環境を活かす

2018年11月25日 - 11:38 AM

ハイコンテクスト環境を活かす

高校生の頃に「嵐が丘」という映画を観ました。映画の中で女主人公が寡黙な男性に対して「何も言わないのは,いないのと同じよ!」というセリフがありました。当時は「男は黙ってサッポロビール」というコマーシャルが流行っていた時代でしたから,その言葉はとても衝撃的でした。

その後,大学で英語教育を学ぶようになり,エドワード・.ホールが唱えた「ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化」という考え方を学びました。共通の文化や経験,価値観があると,伝える努力やスキルがあまりなくても,なんとなく通じてしまうという環境のことをハイコンテキスト文化と言います。逆に,共通の文化や価値観がない環境はローコンテクスト文化と言い,言葉で伝える努力をしないと理解してもらえません。他民族国家の代表であるアメリカやイギリスは,まさしくローコンテクスト環境と言えるでしょう。ですから「何も言わないのは,いないのと同じよ!」というセリフが出てくるのでしょう。一方で,昔の(?)の日本のように共通の言語や文化,価値観を共有している文化では,何も言わなくても「黙ってサッポロビール」を飲んでいれば通じてしまうということもあるのでしょう。私のような年代の人は,その頃のことを懐かしがっている人が多いのではないでしょうか。

ところで,小学校の外国語活動を参観していると,担任の先生と児童が英語でやり取りをしているのですが,参観者には,あまりよく理解できないことがあります。でも担任の先生と児童はお互いに十分に理解し合えているのです。考えみれば,担任の先生と児童は毎日,毎日,同じ教室にいますので,共通の知識や体験を共有しているので,理解しやすい環境が作られているのでしょう。夫婦間でも言葉を発しなくても分かり合えるというのと似ているかもしれません。

さて,外国語を学ぶ時は,このハイコンテクストな環境はメリットなのでしょうか?それともデメリットなのでしょうか?これまでの外国語習得研究では文脈(環境,場面,状況など)や既習の事項を活かすことの重要性が指摘されています。分かりやすい場面の中で,既習事項を踏まえながら,新しい文法や語彙を導入すると理解しやすく,言語習得に繋がりやすいということです。

このように考えると,担任の先生の話す英語の内容は,児童にとっては既に知っていることが多いのかもしれません。ですから,参観者にはわからなくても,担任教師と児童の間では分かってしまうということもあるのかもしれません。だとすれば,担任教師が英語の授業を担当することはメリットということになります。教室内の英語がピジン化(教室内だけでしか通じない)することは避けなければならないのですが,このメリットを活かさない手はないと思います。

「専門性が高い」という意味

2018年11月22日 - 10:00 PM

「沖縄県の教員の資質向上連絡協議会」という機関があります。沖縄県の教育委員会と教員養成を担う県内の大学とが,教育実習や教員養成等について協議をする機関です。今年は第2回会議が11月16日に開催されました。協議題の一つは「小学校高学年の外国語は誰が指導すべきか」となっていました。興味深いテーマなので資料を取り寄せて読んでみました。

県教委は,小学校教員の指導力を高めて専科として指導できるように支援する方向性と,中学校教師に研修を行って小学校へ派遣する二つの方向性を示しています。極めて妥当で現実的な提案理由が記されていました。

ところが県内大学で中高教員養成をしている大学は,そのほとんどが,中高英語免許を取得した人を小学校で活用して欲しいという提案でした。その理由は「専門性が高い」ということでした。一つの方向性としては,それでよいとは思いますが,小学校教員の「専門性」についての言及はありませんでした。少し残念でした。英語指導力(英語力)が高いというだけで小学校での指導が可能だと考えるのは極めて危険です。小学校の先生は小学校教育の「専門性」が極めて高いのです。ですから,小学校の免許状があり,小学校で指導することが可能なのです。中学校の教員は中学校の免許状を持っていても小学校の免許状は持っていません。それは何を意味するのかを一方では考える必要があります。中学校や高等学校の教員養成だけに関わっている大学教員は,小学校の教育がどのようになされ,教員にはどのような資質や能力が求められているのかについては目が行かないのかもしれません。

高等学校校長会も中高の英語教師を小学校に派遣したほうがよいという提案でした。理由は同じく「専門性が高いから」です。「専門性」が高いなら,中高の英語教育も上手くいっているはずなのですが,それも,現実には上手くいっているとは言い難いのです。中学校では英語嫌いが増えており,高校では国が目標としている英検準2級程度に達している生徒は39.3%です。中卒レベルの高校生も多く2極化していると言われて久しくなります。小学校ではよく行われている「対話型の授業」も少ないことが指摘されています。もちろん,素晴らしい中高校の先生もたくさんおられて,中高で良い指導ができるなら,小学校でも素晴らしい指導ができることが大いに期待されます。しかし,一方では逆のケースも予想されます。

もちろん,会議資料だけからでは判断できないところもあります。口頭では県内大学も高等学校長会も,小学校教員の専門性について言及したかもしれません。確かに小学校教員の「専門性」に加えて,もう少し英語力が欲しいと思う時もよくあります。これまでの中高の英語教育が上手くいっていれば,小学校の教員も中高の英語教育を通して,小学校レベルの英語は指導できる力をつけているのが当たり前でしょう。国語や算数はこれまでの学校教育の中で小学校レベルの内容は十分教えることができているのです。しかし,英語だけは,それができていないと言えるのかもしれません。今回の資料に目を通してみて,「専門性」が高いということは,どういうことかを再度考えてみる必要があると感じました。

英語専科教員は誰が望ましいか

2018年11月7日 - 8:44 PM

英語専科教員は誰が望ましいか

小学校への英語教育が議論された初期(1990年代)の頃から,担当者は誰が望ましいかという事が英語教育関係者のみならず,多くの教育関係者や一般市民を巻き込んで議論されてきました。現行及び新学習指導要領では「学級担任の教師又は外国語を担当する講師が指導計画を作成し,授業を実施するに当たっては,ネイティブ・スピーカーや英語が堪能な人材などの協力を得る等・・・」と示されています。「外国語を担当する講師」は英語専科教員等を指していると考えられます。英語専科教員という場合,小学校の担任教師を英語専科教員とする場合と,中学校教員や外部人材を英語専科教員とする場合があります。ここでは,「英語専科教員は学級担任か,または外部人材(中・高等学校英語教員を含む)か」ということについて私の考えを述べたいと思います。

現時点までの国の動きをみますと,学級担任が指導力を高めて教科化に対応するという方向性が示されています。国としては,教科化に対応できるように,<中央研修⇒中核教員研修⇒校内研修>というカスケード型の研修を実施しています。また,移行期においては学校長を中心とした校内研修を確実に実施することを求めています(文科省「小学校外国語活動・外国語研修ガイドブック」)。さらに,文科省は,学級担任が専科としての指導力を高めて指導にあたることができるように,「小学校教員のための英語二種免許[英語]認定講習」を各県1機関に委託して進めてきました。琉球大学においても,沖縄県教育委員会との連携を図りながら,この事業を進めてきており,現在まで53人の小学校教員が免許認定講習を受けています。本年度末には,34人前後の先生方が中学校英語二種免許を取得することが可能な状況となっております。

小学校英語科(5,6年)を担当するのは誰が望ましいか,ということに関して,私は小学校教師が指導力を高めて専科教員として指導するほうが望ましいと考えています。一方で,その対応が難しいことも十分予想されるため,中学校英語教師が英語専科教員として小学校で指導することも併せて検討することが必要だと考えています。その理由を筆者らが行ったアンケート調査(1~4までは平成26年の実施,5は平成30年実施)を基に検討したいと思います。

1.教員養成系大学教員へのアンケート調査

筆者らが全国の教員養成系大学担当教員へ「専科として最も望ましいのは誰か」と質問したところ(60大学のうち14大学から回答),①「小学校の担任の先生で、英語に興味があり、英語が得意な人が望ましい」と回答した大学が78.6%,②「中学校(または高校)の英語教員が望ましい」が28.6%、③「地域に住んでいる方で、英語ができる人」は0%,④「外国人講師」は7.1%となっています。①の理由としては,ア小学校教員であれば児童の状況をよくわかっており、発達段階に応じた適切な指導ができる可能性が高いと考えられるから,イ英語ができるという条件の前に、教師であるとか教育に興味があるという条件がくるべき。ウこれまで小学校で培われてきた外国語活動のノウハウを今後うまく継承、発展させていくことが出来るのは、同じ文化を共有している小学校教員であると考えるから,などとなっています。教員養成に携わっている教員の意識としては,中高の教員に向いている学生と,小学校の教員に向いている学生がいることが認識されているのではないかと思われます。

2.学生へのアンケート調査

琉球大学教育学部の学生で小学校教員を目指している学生(100人)と法文学部を中心とした中高英語教員を目指している学生(101人)にアンケート調査を行ったところ,小学校教員を目指している学生の60%,中高英語教員を目指している学生の71%が英語専科教員が中心になって教えたほうがよいと回答しています。さらに「英語専科は誰が望ましいですか」と質問したところ,小学校教員を目指す学生の回答で最も多かったのは「小学校の担任の先生で、英語に興味があり得意な人」(49%)でした。一方で「自分が専科として教えてみたい(強くそう思う[2%]+できればそう思う[10%])と回答した学生は12%にとどまっています。小学校教員を目指す学生は,英語専科は同じく小学校教員を目指している人の中から養成して欲しいと考えていますが,自分が希望しているかというと,そうではないことがわかります。筆者らの聞き取りからも小学校の教員を目指す学生は,担任を希望している学生が圧倒的に多いことがわかりました。

3.   現職小学校教員(92人)へのアンケート調査

「小学校で英語が教科として導入された場合、中心になって教える人は、誰が望ましいですか。」という質問をしたところ,87%が「英語専科教員が望ましい」と回答しています。さらに,「専科は誰が望ましいですか」と質問したところ,31%が「小学校の担任が専科になったほうがよい」,41%が「中学校教員が専科になったほうがよい」,2%が「地域の人材を活用したほうがよい」,20%が「ALTなどがよい」と答えています。この回答から,小学校教員の意識としては,中学校教員,または小学校教員に英語専科教員になって欲しいという希望が高いことがわかります。地域人材と答えた小学校教員はわずか2%にとどまっています。

4.現職中学校教員(25人)へのアンケート調査

中学校の教員に「小学校の専科教員として望ましいのは誰ですか」と質問したところ55%の教員が「中学校教員」と答えています。また,中学校教員に「小学校で専科として教えてみたいですか」と質問したところ,「強く希望する」が11%で,「できればそうしたい」が49%となりました。

5.小学校外国語活動及び外国語を指導することに対する自信

平成30年1月に沖縄県内451人の小学校教員を対象にアンケート調査を行いました。2020年度から始まる教科・外国語に対する自信について質問したところ「とても自信がある」が2%,「まあ自信がある」は14%,「あまり自信がない」は59%,「まったく自信がない」が25%となっていました。高学年の外国語は教員の3分の1が担当することになります。せめて30%程度は「自信がある・まあ自信がある」と答えて欲しかったのですが,結果は上述したとおりとなりました。

まとめ

学習指導要領には「高学年の外国語科の目標を踏まえると,広く言語教育として,国語科をはじめとした学校における全ての教育活動と積極的に結び付けることが大切である」と示されています。外国語科の目標がスキルのみを中心としているのではないことがわかります。また,外国語教育には,他教科とは異なる「不安感」が絶えず付きまとうことがこれまでの研究からわかっています(Horwitz, 1986; 川内2016,他)。「身近な人,自分自身を理解している人」が指導者として望ましいことも多くの研究が示唆しています(松宮,2012,ほか)。そのため,小学校英語は学級経営(支持的風土づくり)が鍵とも言われてきました。

小学校で扱う英語は中学校レベル(英検3級)を超えるものではありません。小学校の教員は中学校,高校,大学と英語を学んできていますから(教員採用試験にも合格するほどの優秀な人たちです),本来ならば英検2級(高校卒業)レベルの英語力を身に付けていることは当たり前です。しかし,そうなっていないことが現実で,それは日本の英語教育の失敗を,残念ながら白日の下に晒す結果となってしまいました。(筆者らの調査では,自分自身の英語力を英検2級以上と自己評価している教員は15%でした。)

筆者は,これまで小学校で多くの授業を参観してきました。小学校の先生方の授業力の高さには,いつも驚かされます。しかし,英語力という点では課題も見えます。今後は,英語に得意な先生や,外国語の授業に興味ある先生方が英語力等を向上させて専科として指導することが望ましいと思います。しかしながら,アンケートでも見てきたように,全ての小学校教員にそれが可能かというとそれも難しいと考えられます。

そこで,「中学校教員の力を借りる」という方向性が模索されることになります。最も「手っ取り早い」方法と考えられていますが,「最も危険」な方法になる可能性もあります。研修もなく,中学校と同じような方法で指導すると,逆に小学校外国語の目標を達成することが難しくなる可能性もあります。

筆者は,中学校の教員の60%が小学校の専科を希望している(「できればそうしたい」を含む)ことに驚きと不安を感じています。課題を抱えているのは中学校の英語教育も同様です。むしろ中学校英語教員には中学校の英語教育にどっぷりとのめり込んで欲しいとさえ思っています。中学校で優秀な英語教師は小学校でも上手く教えることができます。しかし,逆のケースも出てくる可能性もあります。中学校教員を小学校に配置する場合は慎重になるべきと考えています。

まずは小学校の先生の中から専科教員を養成し,足りない分については,中学校の教員の人選を慎重に行いしっかりと研修を実施したあとに小学校英語専科として活用することが望ましいと考えます。

【参考資料】

大城賢・東矢光代「外国語活動の教科化にともなう教員養成カリキュラム開発」文科省委託事業報告書,2015年3月

大城賢・深澤真「小学校外国語活動及び外国語導入に対する小学校教員の意識」琉球大学教育学部紀要,2018年9月

文部科学省「小学校外国語活動・外国語研修ガイドブック」文科省,2017年6月

Small Talk の意味と意義

2018年9月25日 - 5:37 PM

英語教育で使われる用語にTeacher TalkやClassroom Englishなどがあります。今回の学習指導要領ではSmall Talk という用語が登場しました。これは,Teacher Talk やClassroom English とは異なるものでしょうか。

Teacher Talk というのは,外国語の教師が,相手に合わせて,分かりやすいように外国語を調整しながら話すことです。これと同じ意味の用語として,caretaker speech(幼児を世話する人の言葉)やmotherese(母親言葉)などがあります。

Classroom English は一般に授業中に使う簡単な英語のことを指します。‟Open your book.“ ‟Let’s play a game.” ‶Good job!″など定型化している表現と言ってもよいでしょう。

それでは Small Talk とは何でしょうか。英語辞典を引くと「世間話」「雑談」という訳語が出てきます。知り合いのネイティブに聞いてみるとエレベーターが上がっていく間(または降りていく間)に話される「こそこそ話」だと説明していました。日常使われるsmall talkは使う人によってイメージが異なるのですね。

さて,英語教育用語として使うにはそれを定義して使う必要があります。使う人によって受け取るイメージが異なるのでは困ります。文科省が発行している『小学校外国語活動・外国語研修ガイドブック』では 「Small Talkとは,高学年新教材で設定されている活動である。2 時間に 1 回程度,帯活動で,あるテーマのもと,指導者のまとまった話を聞いたり,ペアで自分の考えや気持ちを伝え合ったりすることである。また,5 年生は指導者の話を聞くことを中心に,6 年生はペアで伝え合うことを中心に行う(p.84)」と説明しています。

この定義を踏まえると,相手に合わせて,外国語を調整しながら話すこという点ではTeacher Talk と重なるところがあります。しかし,「あるテーマのもとで,まとまった話をする」という点ではTeacher Talkの定義と異なっています。また,Classroom English がやや定型的な英語表現であるのに対してSmall Talkは「自分の考えや気持ちを伝え合う」ことですので,Classroom Englishの定義とは異なります。‟Let’s play a game.“ は活動を進めるために必要な表現ではありますが,まとまった話でもありませんし,指導者の気持ちや考えを伝えるためのものでもありません。

さらにSmall TalkがTeacher Talk ともClassroom English とも決定的に異なるのは児童同士の対話もSmall Talk としている点です。

わざわざ新しい用語としてSmall Talkを導入した理由は何でしょうか。私は新しい学習指導要領の目標を実現するためには必要だったためではないかと考えています。新しい学習指導要領では「言語活動」が再定義され「自分の考えや気持ち」を表現する活動と定義しています。また,領域別の目標として「やり取り」が新たに加わっています。このSmall Talk は指導者の「考えや気持ち」を表現する絶好のチャンスです。また,6年生では児童同士の「やり取り」も増えることになりますから,児童同士のSmall Talk も進めていく必要があります。

ある研究会で,「Small Talk は担任の先生には難しいので文科省の教材を聞かせておくだけで良い」と発言された先生がおられました。聞かせておくだけならリスニング活動にはなりますがSmall Talk にはなりません。

また,先日参観した授業では文字を導入するために身近な英語の看板を導入する活動をALTと一緒に行っていました。これ自体はとても素晴らしい活動ですが,指導案にはSmall Talk と書かれていました。これはSmall Talk ではありません。なぜなら「まとまり」がなく,指導者の「考えや気持ち」は皆無だったからです。このような活動は,Oral introduction と呼ばれていたもので,従来から行われていたものです。

新しく定義されたSmall Talk によって,指導者は既習表現を自分のSmall Talkの中で繰り返し使うこともできます。児童は学習した表現を何度も聞くことになりますから定着につながります。また,未習の語彙や表現であっても,まとまった話ですから,その話の場面や状況から児童は英語を聞きながら意味を推測する力もつきます。

何と言っても,身近な話ですから,興味・関心も高まります。自分たちとは関係のないMary やTom の話ではないのです。

この,Small Talk を正しく理解して実施していくことが新しい学習指導要領の目標を実現する鍵となると私は考えています。

 

外国語活動における「言語活動」

2018年9月18日 - 11:56 AM

新しい学習指導要領(外国語活動)では,「思考力,判断力,表現力等」や「知識及び技能」,「学びに向かう力,人間性」は,「言語活動」を通して指導することが示されている。つまり,言語活動は「資質・能力」を育成する核となるものである。

「言語活動」という言葉は従来も使われており言語材料についての理解や練習なども「言語活動」に含まれていた。しかし,今回はこの「言語活動」が再定義されている。「外国語活動・外国語研修ガイドブック」(文部科学省)には,「言語活動は,『実際に英語を用いて互いの考えや気持ちを伝え合う活動』を意味し,言語材料について理解したり練習したりするための活動とは区別されている」と述べられている。

従来の「言語活動」は理解や練習だけで終わっていたことが多かったと思われる。テキストの対話を覚えて発表させるだけの活動等は,これからは言語活動とは言わないのである。なぜなら,そこには「互いの考えや気持ち」が含まれていないからである。

言葉の本来の役割は「自分の考えや気持ち」を相互に伝え合うことである。外国語といえども言葉に変りはない。したがって,「言語活動」の再定義は,言葉の本来の役割を体験させることに他ならない。当然,自分の考えや気持ちを伝えるには,どのような表現等を使えばよいのかを「思考・判断」することが求められる。そして考えや気持ちを伝え合うために「知識・技能」も活用される。さらに,考えや気持ちを伝え合う経験を通して「主体的に外国語を学ぼうとする態度」は育成される。単に文法を理解したり,覚えたことを言うだけの活動からは,これらの「資質・能力」はいずれも育成することはできない。そのためには指導者も自分の考えや気持ちを外国語で伝えることが求められる。そのような指導者の下でこそ自分の考えや気持ちを伝えたいと思う児童が育つのである。

「説明や練習」を通してではなく「言語活動」を通して指導に当たることが今回の学習指導要領の目標を実現させるための鍵である。