2019年4月25日(木),A小学校6年1組のK先生の授業
2019年4月25日(木),A小学校で6年1組のK先生(担任)とT先生(ALT)の先生の授業を参観しました。K先生は英語力も高く,いつもチャレンジングな授業を見せてくれます。以下に授業の概要と私の感想を記します。
【単元名】 This is Me!
【単元の目標】
〇進んで,自己紹介をし,伝え合おうとする。
〇好きなことや誕生日などについての表現を言ったり聞いたりして慣れ親しむ
〇好きなものを粟ラス表現には様々な言い方があることに気付く
【本時の目標】
〇好きなものについて進んで尋ねたり答えたりして伝え合う。
〇自己紹介カードに(名前と誕生日)を書く。
【授業展開】
<教師のSmall Talk>
K: I am very happy. I can study English with you today. Tomorrow is Friday. The day after tomorrow, we have a golden week! (happyやcanの既習事項を使ってみせる。The day after tomorrow は未習だが,ジェスチャーなどによってその意味をつかませる)。
<児童同士のSmall Talk>
〇児童同士のSmall Talkの前に教師同士でモデルを見せる。(K=神村先生,T=Tania先生
K: What is the topic for today? Please listen. (今日のメインの活動の紹介)
K: What color do you like?
T: I like blue.
K: Oh, that’s a nice color. Why?
T: Because the ocean.
K: Ocean color.
T: How about you? What color do you like?
K: Me? My favorite color is green. Dark green. (like 以外にも好きであるということを表す favorite を導入)
T: Why?
K: Because I like mountains. I like nature and trees.
T: Why?
K: Relax.
〇児童同士のSmall Talkを行う。
S1: What color do you like?
S2: I like red.
S1: Why?
S2: Because…..(because 以下があまり言えない)
<教師の中間評価>
K: ここのグループの進め方が良かったでsが,何だったと思いますか?
S: Hello, から始めているのが良かった。
K:そうですね。サプライズだったことはありましたか?
S: 女子にしては好きな色がbrown だったので驚いた。
K:困ったことありましたか?
S:「薄いピンク」って何ていうかわからなかった。
S: Peach pink じゃない?
S: 「やわらかい」は何と言うのですか?「ほわほわ」はなんて言うのですか?
K: 「ほわほわ」は心が温かくなるかんじだから,warm color でいいんじゃないかな。
<前後で同じようなペア活動を行う>
前後でWhat color do you like? I like … を言い合う。
Because まで進める児童はほとんどいなかった。
<教師の活動に対する評価>
T: ほとんどの人がHelloで始めたのは良かったと思います。
T: 困ったことは後で聞きますね。
<活動の説明>
〇これから自己紹介をします。5年生にやります。5年1組さんの児童に自己紹介をします。
します。そのやり方を確認しましょう。
T:自分の好きなもの,友達の好きな物を言えるようにしましょう。最後に自己紹介カードも書いていきます。
<チャンツをつかって誕生日の言い方に慣れ親しむ>
誕生日の時は立ち上がる。児童は良く自分の誕生日を聞いて立ち上がっていた(ように見えた。聞き取れていな児童への指導はどのように行うのか少し疑問に感じた。)
〇Three hint quiz(大阪なおみさん,安室奈美恵さん,三浦太一さん (分からない人が結構いた)の中からヒントを聞きながら当てていく。
T: Who am I
T: I like dance.
T: I’m from Japan.
T: My birthday is September 20th
〇女子児童の写真を見せてヒントを出す
T: I like green.
T: I like Japanese.
T: My birthday is March 14th.
T: Who am I
〇男子児童の写真を見せてヒントを出す
T: I like green
T: I like dogs
T: My birthday is August 19th
(以下,同じような活動が続く)
K: 好きな色を聞く以外に,好きな生き物を聞くには“What animal do you like?”と言います。
<Memory gameを行う>
T: I like killer whales.
S: I like dogs.
S: You like killer whales, you like dogs, and I like cats.
……
<振り返りカードへの記入>
【この授業の良かった点】
◯基本的に英語で授業が進められていて豊富なインプットがあった。(今後はインプットの質と量を上げていくことが大切となろう。)
〇単元の目標は同じクラスの友達ではなく,5年1組の児童に自己紹介するというものである。活動に目的が与えられたのはとても良かった。5年生に自己紹介をするにはどのような点に注意が必要か(内容面,表現面)などについて思考・判断の観点から考えさせる場面が単元のどこかに位置づけられているとさらによいと思う。
◯誕生日の言い方や,月,日にちの言い方に慣れるために電子黒板がうまく活用されていた。
【今後検討が必要と思わる点】
〇普通の授業と比べるとインプットは多い方だが,さらにインプットの質と量を上げていくことを検討して欲しいと思う。「語彙レベルの表現」から「文レベルの表現」に持っていくようにすると,文の構造についても気付きが起こるものと思う。例えば今回の指導者同士の会話では以下のようになっていた。
T: Because the ocean.
K: Ocean color.
↓
T: Because I like the ocean. I like the color, ocean. I like blue.
K: Oh, You like the ocean. That’s why you like blue. You like the ocean, ocean color blue.
〇スリーヒントクイズはとてもよい活動だったと思います。しかしI like green,とかI like turtles. がヒントとして機能していたのか,また機能させる意図があったのか,疑問でした。また,turtles などの意味が分からないままの児童には手立てが必要ではなかったでしょうか。全ては分かる必要はないのだが,カギとなる単語は,例えば絵を添えるなどして意味が分かるようにしておかないと,やがて児童は,教師の英語を聞かなくなるのではないかと思います。
〇活動に入る前の練習の時間が少ないように感じました。「自分の考えや気持ち」を伝える言語活動を通して学ぶということはとても大切なことです。しかし,それが強調され過ぎてドリルがまったくなくなると,今度は言えなくなってしまうこともあります。意味が分かったうえで練習することも大切と思います。
〇Because 以下は言えない児童が多かったように思いました。指導者が児童にBecause 以下についても言わせたかったかどうかが不明でした。しかし授業後の検討会では,児童の様子から,because 以下まで言わせるのは難しいと判断して,無理をさせなかったということでした。教師が示したモデル文にはbecause が入っていたので,何とか言おうとしていた児童もいました。このような場合は,「今回はbecause 以下は言わなくてもいいです」と児童に明確に指示を出したほうがよいのではないかと思いました。そうすれば,安心して活動ができるのではないかと思います。
〇My favorite とう表現を導入する予定になっていましたが,My favorite …が導入されたのは最初のところで1回のみでした。これも授業後の検討会では,本時では like と一緒に導入することは難しいと判断して,それ以降はMy favorite を使わなかったということでした。授業の途中で児童の様子をみながら指導案どおりにはいかないことがあるのは当然です。しかし,because とMy favorite については,もう少し実態を踏まえて詳細な単元計画が必要だったのではないかと思いました。
〇指導案には自己紹介カードまで書かせる予定であったが,そこもできなかった。授業後の検討会では時間が不足しそうだったので削除することにしたということでした。
〇Three hit quiz のところでK先生がHe likes green. と発話していました。当然,he が主語の場合は動詞の後ろに-s (likes) が付くことなど理解している児童はほとんどいません。児童同士の対話の中に,I likes green. と発話する児童がいたことには驚きました。これは言語習得の分野ではover generalization (過剰一般化)と呼ばれるものです。実際にEFL(英語が外国語として学ばれる環境)においても over generalization が現れるのだとうことがわかりました。これは I went … と言えていた児童が,cooked, studied, played 等を学習したあとに,goed と言うのとまったく同じです。ルールは理解したのですが,そのルールを適応してはいけないところに適応してしまったということです。ルールを理解したとう点では褒めるべきものです。先ほどの I likes と発話した児童が間違いに気付くのは教師の豊富なインプットが必要です。教師がI like … と言い続けるのを聞いて,自分の間違いに気付き,そこで深い理解が起こるのでしょう。それがいつなのか知りたいところです。小学校の授業観察がますます面白くなってきました。
教育学部附属中学校第35回入学式
本日(4月9日)琉球大学教育学部附属中学校の入学式が行われました。私も来賓として招かれ,学部長が別件で出席できなかったため,教育学部を代表して来賓祝辞を述べる機会が与えられました。普通はこのような場合,学部長の祝辞を預かり代読するのですが,私たちは,学部長が出席できない場合は副学部長が学部を代表して挨拶することにしています。そういう訳で,今日は私が学部を代表して挨拶することになりました。
附属中学校の入学式で感動的だったのは,何と言っても在校生の入学式に参加する態度です。式の間,在校生の席からは咳一つ聞こえませんでした。シーンと静まり返っています。これは,最大級の新入生に対する歓迎の気持ちの表れであり,挨拶する人への配慮です。教員がついているわけでもなく,注意する姿も全くありません。中学生で,あのような立派な態度が取れることに驚くと同時に大人のほうが見習うべきではないかと思いました(笑い)本当に感動的でした。
私の挨拶の原稿は以下のとおりでした:
本日は,誠に恐縮ですが,副学部長の大城が教育学部を代表してご挨拶させていただきます。
新入生のみなさん,本日はご入学おめでとうございます。みなさんは今日からは琉球大学附属中学校の1年生です。たくさんの希望と大きな夢を胸に,附属中学校の門をくぐったことと思います。中学校は自立の時期とも言われています。自分で考え,自分なりの答えを探し,行動する必要があります。
さて,そこで,さっそくですが,みなさんに一つ質問をします。「戦争」の反対は何でしょうか?「平和」でしょうか?私も「平和」と思いました。しかし私が先日読んだ本の中には「戦争・暴力の反対語は、平和ではなく対話です」と書かれていました。読み進めていくと「対話のない社会はいつか病み、犠牲者を出し、平和はあるとき、あっけなく崩れてしまう」と書かれていました。現在の世界を見てみると,とても残念ですが,戦争や紛争,そして暴力などが起こっています。身近なところでは友達との断絶,いさかいなども起こっているかもしれません。
この本の著者は,これらの問題は全て「対話が欠けていたからだ」あるいは「対話能力を持っていないからだ」または「はじめから対話をする気がないからだ」と述べています。
みなさんが活躍する21世紀は言語や文化や価値観の異なる多くの人々とこれまで以上に出会う機会が増えることは確実です。そんな時に平和に生きていくためには,お互いの考えや気持ちを伝え合う対話は絶対に必要となります。対話は一方的に話すスピーチではありません。考えや気持ちをやり取りする行為です。
これからすぐに新しい教室に移動し,友達や先生と出会います。ぜひ,自分から声をかけて対話をしてみてください。そしてこれからの中学校生活においても,たとえ相手と考えが異なっていても,粘り強く対話を続けることができるように努力してみてください。対話の力が,戦争を避け,私たちが平和に穏やかに生活を送る最大の手段だと私は考えています。
さて,保護者の皆様,本日はお子様のご入学,誠におめでとうございます。附属中学校は他の公立学校とは異なる3つの役割を持っています。一つ目は大学の教員と一緒に共同研究を進めること,二つ目に,研究の成果を活かして公立学校のモデルとなること,三つ目に,教育実習の受入校となり,将来,教員を目指す学生を指導することです。その役割を担っている学校は沖縄県内ではただ一つしかありません。その役割を果たすためには,公立学校では当たり前に行われていることが,附属学校では行われないかもしれません。また,その逆もあるかもしれません。公立学校と異なっているからこそ,附属学校の存在意義があります。どうか,そのことをご理解いただき,附属学校へのご協力をお願いいたします。もちろん,本日,大切なお子様をお預かりしました。教育学部の教員も附属学校の教員と一丸となって新入生の学びと育ちを支えていきたいと考えています。
新入生のみなさま,みなさまの中学校生活が楽しく,有意義なものとなることを願って,教育学部代表の挨拶とさせていただきます。
ありがとうございました。
“理想を持てなかったら,生きている資格がない”
今年も英語科教育法や外国語活動を担当することになりました。
さて,表題の“現実感覚がなければ生きていられない。理想を持てなかったら,生きている資格がない”は,私が30年以上前に読んだレイモンド・チャンドラーの小説『プレイバック』の一節です。30年以上も前に読んだ小説なので,ストーリーもあまりよく覚えていません。ただ,私立探偵の男が怪しい女を追っかける話でした。翻訳本ですから,いかにも“翻訳”という感じの日本語が多く,ところどころ意味不明の表現があったことはよく覚えています。そして,なぜか忘れられないのが“現実感覚がなければ生きていられない。理想を持てなかったら,生きている資格がない”という一節です。
私は大学を卒業して中学校の英語教師になりました。今では,想像できないかもしれませんが,当時は理想と情熱にあふれた細身の青年教師でした。現場の授業は困難を極めるものでした。授業がうまくいかない,生徒が暴れる,暴言を吐く,などは日常的に起こっていました。
授業がうまくいかないのは,こんな環境のせいなのだ。生徒に学習意欲がないのだからしかたがない。このような考えが頭をかすめることがよくありました。しかし,一方で,教師として,これでよいのか,という声も聞こえてきました。そんな時,私の頭を駆け巡ったのが『プレイバック』の一節です。
教育という現場では,さまざまな困難が待ち受けています。現実感覚がなければ,本当に生きてはいけないと思います。しかし,理想をもって授業に取り組んでいかなければ現実は改善されません。
学生のみなさんには,現場の現実をしっかり見て欲しいと思います。教育実習では,自分の理想としていた教室とは異なる現実と出会うかもしれません。しかし,現場のせい,児童・生徒のせい,と考えた時点で教師としての資格はありません!
2020年からは小学校の英語が教科化されます。中高も指導内容が高度化していきます。課題も山積しています。学生のみなさんには,現実を直視しつつ,しっかりとした理想を持った教師になって欲しいと思います。
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英語授業マイスター発掘プロジェクト
沖縄県には県教委が主管する「英語教育小中高大連携委員会」というものがあります。この委員会の活動の一つは「英語授業マイスター発掘プロジェクト」です。これは,県内の小・中・高等学校で素晴らしい授業を行っている先生方を発掘し表彰するというものです。私もこのプロジェクトに関わっています。
今日は小中高大連携シンポジウムに先立ち平成30年度のマイスター表彰式が琉球大学で行われました。受賞の挨拶を聞いていると,どの先生も,英語教師という前に,教師としての魅力を感じさせてくれました。共通しているのは児童生徒に対する「思い」が強いということです。受賞者の先生方からは「この生徒たちを,他の先生方にも見てもらいたいという気持ちでマイスターへ応募しました・・・」「生徒のポテンシャルを信じることが授業改善には必要です・・・」「生徒の自己肯定感を大切にしたいという思いで授業を行っています・・・」などの言葉がありました。私は,このような先生方の教室では「間違えても大丈夫,もっと英語を話してみよう」という児童生徒は増えてくるものと確信しました。
今日は,ある受賞者の所属校の校長先生も参加していました。自分のことのように喜んでいました。校長先生が背中を押してくれたからこそ,先生方も応募する気になったと思います。児童・生徒が素晴らしい英語教師によって育つように,教員もまた素晴らしい管理職の先生方によって育っていくのかもしれません。受賞者のみなさま,おめでとうございました!
2018年11月29日 We can!1を使った頻度を表す語の指導
2018年11月29日,神村先生の6年生の授業を参観しました。教材は「We can !1 のUnit 4」。5年生用の教材ですか,指導者の神村先生によると,前年度にこの単元の内容を実施していないので取り上げたということでした。
【授業の流れ】
1.Sound Tennis(Tで始まる単語を言い合う)
Tennis, Thursday などが出てくる。
全体でやったあとにペアで行う。
Tea, toilet 等がでた。
2.Small Talk(ALTに家での仕事について聞く)
3.Who am I gameを行う。
6年生を担当する3人の担任の先生の写真を電子黒板で写す。
ヒントを聞いて誰のことかを当てていく。
I usually wash the dishes.
I sometimes clean my room.
I never cook dinner.
Who am I?
答えがでたら実際に担任の先生が自分の家での仕事を言う動画を見せる。
4.今日のめあて(家での役割についてインタビューし合う)
5.インタビューをし合う。聞いたことをワークシートにまとめる。
A: Do you wash the dishes?
B: Yes, I sometimes wash the dishes?
A: Do you clean your room?
B: No, I never clean my room.
6.インタビューの感想を発表する。
児童の発表には以下のようなものがあった。
・女の人がよく家事をしているように感じた。こんなところから,大人になって家事をする人が女だと決まるんだと思った。
・Never とsometimes が多かった。
・I cook dinner. がsometimes が多かった。
・Cook dinner が以外といなかった。
7.振り返りカードへの記入
【良かった点】
①本時の目標である頻度を表す語(usually, sometimes, never)を学年の先生方が家でやっている仕事を紹介するという形のクイズにしたのは良い考えだったと思います。また,回答は実際に本人がVTRに登場して,その答えを英語で言っていました。学年を巻き込んだ授業づくりになっていたことが良かったと思います。このようなVTRを作成しておくと,いろいろな場面で編集して使えることもありますので,教材としてストックしていくとよいと思います。
②授業者が児童と「対話」をしながら授業を進めていたこともよかったと思います。おそらく,この小学校の特徴だと思いますが,どの教科においても,対話型の授業がなされているように感じます。また,クラスには支持的風土が醸成されています。他教科でも行っている「対話型」の授業をうまく英語の授業にも取り入れていることが良かったと思います。
③指導者は終始,適切な声量と,場に合わせた英語を使っていました。落ち着いた授業展開でした。
④電子黒板(動きがあるもの)と黒板(貼っておいて,絶えず参照するもの)の長所を活かした使い方がなされていました。
【今後の課題】
1.Sounds TennisでTで始まる単語を言わせました。Tennis, tea が出るのはよくわかるのですが,Thursday が出たのには驚きました。繰り返し見ているので発音は/t/ではないのですが,Tで始まることを覚えていたのでしょう。文字を繰り返し見ることによって,音と文字の結びつきについても慣れ親しんでいくのだと思いました。
全体で取組ませたあと,ペアでも取り組ませたのですが,児童によっては難しい活動であることも分かりました。Tで始まる語が一語も出ない児童もいました。これは全体での活動にとどめて,分からない児童が「自分にはできない!」という感情を持たないようにする配慮も必要かもしれないと思いました。決してやさしい活動ではありません。このような難しい活動は全体で行い,文字と音の関係に負担なく慣れ親しませることが大切ではないかと思います。
2.3人の先生の家での役割を「Who am I game」にしたのは良い考えだったと思います。他のクラスの担任の先生が普段どんなことを,どのような頻度でしているかを知るよい機会になったようでした。しかし,児童の興味はclean my roomや,cook dinnerなどに向いていて,頻度(usually, sometimes, never)などには向いていないように見えました。
3.児童がインタビュー活動を行いました。洗濯している絵や,掃除をしている絵がついたワークシートを用いて活動をしているので意味の理解は容易だったと思われます。児童の活動をみているとDo you wash the dishes? と訊かれて I sometimes までは答えられたのですが,その後が続かないことが多くありました。ここでは,get the newspaper, take out the garbage, water the plantsなどが出てきますが,それらの表現に慣れ親しませないうちに頻度を表す語を入れるのは難しいと感じました。簡単に言うとget the newspaper の表現が十分に言えるようになった後だと,頻度を表す語(usually, sometimes, never)の導入がスムーズにいくのですが,get the newspaper がうまく言えない段階だと頻度を表す語を導入しても,児童がそれをintake するのは難しいということです。言語習得の教科書に書いているとおり,十分に慣れ親しんだものの上に新しいものを追加した時に,それに注意が向き習得が可能になります。このように考えると,この教材自体がかなり難しいことを要求しているようにも思われました。もし,頻度を表す語に注意を向けさせることが目標なら,質問は Do you clean you room? のみにして,答えをalways, usually, sometimes, never から選ぶようにすればよいかもしれません。例えば以下のような感じです。
A: Do you clean your room?
B: Sometimes.
こうすると児童の注意はalways, usually, sometimes, neverに集中することになり,頻度を表す語についてのintake もスムーズに進むのではないかと思います。
3.インタビューの感想で,「女の人がよく家事をしているように感じた」というのがありました。これは他教科でも学習した内容だったのか,それともこの授業をとおして発見したことであったのかはよくわかりませんでした。いずれにしても,このようなことを外国語活動を通して学ぶ(発見する)ことは内容重視の授業展開になっている証拠で,望ましいことではないかと思いました。「Cook dinner が意外といなかった。」と感想を述べた女児がいましたが,私自身はdinner をつくらない児童が多いのが当たり前だと思っています。ひょっとしてこの女児は母親の仕事(夕食の準備)を一手に引き受けているのかもしれないと逆に不安になりました。子どもの貧困が社会問題化しているなか,この発言をした児童について,しっかりと注意して見ていく必要があると感じました。